【Y】第31回The Young Salon講演会を開催しました

テーマ:「中国問題」

12月15日午後、ひかりプラザにて、48名の参加の下、第31回The Young Salon講演会を開催しました。講師には、1975年慶應義塾大学経済学部を卒業後、国連日本政府代表部公使、上海総領事、香港総領事、カンボジア駐在特命全権大使などの要職を歴任された隈丸優次氏を迎え、「中国問題」をテーマとして取り上げました。講演の骨子は下記の通りです。

  1. 中国は人権より国家主権を優先する国として、欧米各国から異質な国として思われ始め、その対応に各国は急速に不安を覚えている。
  2. トランプ氏の「アメリカ第一主義」により、これまで米国主導で世界を支えてきた理念・体制・普遍的価値に変化を来している。米国においても、・ロシア・中国と同じように「力」を基本価値とする考え方が強まり、これが軍備拡張の流れを生み、世界情勢を危険水域に導きつつある。わが国としてはこれまでとは違った自主的な外交政策が必要とされよう。
  3. 中国は文化大革命以降78年から「改革開放」が始まり、その後天安門事件が発生したが、その後の経済発展が中国共産党の弱体化ではなく、むしろその支配の強化に繋がった。2001年に中国がWTOに加盟し、北京五輪がきまったことにより、中国愛国主義が一段と進んだ。中国共産党は改革開放を進めると同時に国内統制を強化した。
  4. 米中関係はこれまでの協調体制から急速に競争関係、敵対関係へと変容を遂げつつある。習近平氏は「中国の夢」の実現を図り米国を超えようとしている。他方、「American First」を掲げる米国は孤立したのでは覇権を守れないとのジレンマがある。
  5. 世界の多くの国において、東南アジアを含め、現在民主化の停滞と強権主義の横行がある。中国は支援、貿易、投資を通じて影響力の強化を図っている。一方欧米諸国は自国(地域)内の問題に忙殺される等、世界各地に手が回らないのが実情。
  6. わが国は三本柱(総合力による外交、日米同盟の堅持、ASEANとの共生)の元、外交活動を活発にし、「自由、民主、人権、自由経済、透明性、法治など」の価値を基本とする世界秩序が守られるように努め、国際連帯を進めることが重要。中国とは、その戦略を注視し警戒しながらも対話をし、意思疎通を図って行くことがこの地域の安定と繁栄のために肝要である。

尚、引き続き行われた懇親会には講師を含め22名が参加し、和気藹々の楽しい懇親会となりました。

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【Y】第30回 The Young Salon講演会を開催しました

 【テーマ:”モンゴル草原を馬で走る、秘境シベリアでのイトウ釣り”(ノモンハンでの慰霊の報告を兼ねて)】

 10月20日(土)午後、本多公民館講座室にて、23名の参加者の下、第30回The Young Salon講演会を開催しました。講師として御迎えした小田孝志さんは慶應義塾大学(経済)を45年に卒業され、また当国分寺三田会の会員でもあります。卒業後東京新宿ライオンズクラブに入会、また御茶ノ水ロータリークラブでは会長を務められ、合計30年を超える社会奉仕活動の経歴を持っておられます。趣味の世界ではこれまでオーストラリア、カナダ、メキシコ、モンゴルの大自然の中で数多くの乗馬を経験され、特にモンゴルでの乗馬に魅せられ、爾来10年間毎年モンゴルの大草原を馬で駆け巡っているとの事です。 講演では第一部でモンゴルの概況をお話頂きました。モンゴルの国土は日本の4倍、人口は日本の横浜市より少ない300万人。信じられない位人口密度の低い国で、隣の町へ車で移動する場合は、安全面から日本車が一番多く走っているとの事、また非常に親日的な国であるとの事です。その昔、モンゴル帝国が世界を制覇した最大の武器は馬(小柄で足は短いが持久力に富む)と弓(小型で命中率は劣るが先端に火をつけて射ると村々は大火災)で、またモンゴル軍の鎧は皮製で金属製のヨーロッパに比べると素早く動ける利点があった由。1万人の兵が10万頭の馬を引き連れて村々を襲う凄まじい攻撃を防ぐ為、万里の長城が築かれた事も理解できます。四方八方、見渡す限りのモンゴルの大草原を小田さんが馬で駆け巡る姿にわが国ではとても体験できない迫力が伝わってきました。 講演の第二部はモンゴル秘境探検とノモンハンの慰霊です。 マイナス10度もの極寒の秘境シベリアで、テントで野営しながらのイトウ釣り、オオカミの遠吠えを背に、ぞっとする危険を感じながらの魚釣りは、通常では手を出せない冒険です。講師は先月(9月)、日本人2万人が亡くなったノモンハン事件の戦禍が残るこの地での慰霊祭を企画し行なって来られました。講師が映像で示した姿には鉄砲を担いで行軍する兵隊の姿、日本軍の戦車や飛行機の残骸が紹介されました。この事件ではソ連軍も2万5千人が亡くなったと言われていますが、改めて戦争の悲惨さを思い知らされました。 講演会後は引き続き有志による懇親会で大変盛り上がり、実に楽しい一日でした。

 

【Y】第29回 The Young Salon講演会を開催しました

【テーマ:AI、IoTがもたらす交通革命】

 2018年8月11日(土)、本多公民館2F講座室において第29回The Young Salon講演会を開催しました。
講師には山内弘隆氏(一橋大学大学院教授)をお迎えし、テーマ「AI、IoTがもたらす交通革命」の下、約2時間の講演を頂きました。会場には38名の皆様にお集り頂き盛況な講演会となりました。
引き続き行われた懇親会でも、山内先生を含め16名の皆様に参加頂き、大変盛り上がりました。以下講演要旨です。

  1. 交通経済学とは
    (1)慶應義塾大学の交通論
    私は慶應義塾大学で藤井彌太郎先生に、また増井健一先生の「交通経済学」で交通論を学んだ。交通経済学の研究では、社会的にも大きな影響力のある鉄道がテーマになる。チャンドラー氏はその著書「経営者の時代」の中で鉄道を取り上げ、またケンブリッジの経済学者A.C.Pigouは1920年の著書「厚生経済学」第4巻で“差別化”について述べているが、その題材が鉄道である。彼のもう一つの理論として“混雑”がある。混雑は車が道路の処理能力以上ある為に発生すると言うもので、これらが交通経済学の出発点である。慶應義塾大学では交通論をこうした経済学的な分析から論じている。
    (2)一橋大学の交通論
    一方、一橋大学においては関一先生が一橋大学を卒業し大蔵省に入省した後、再び学校に戻り交通論が教えられたが、より実学的であると思う。関先生はその後大阪市長に転向し、大阪で御堂筋の拡幅、公営住宅の整備、大阪市立大学の開校等都市整備に尽力、「シティプランニング」という外国語を「都市計画」と訳したのも関先生である。交通関係では日本発の公営地下鉄「御堂筋線」の建設、費用回収の一環として駅周辺の土地所有者に負担頂く方式を導入した。鉄道建設は駅周辺の地価を上げる効果がある事から、受益者に負担を求めたものである。(受益者負担型)
    他方、阪急電鉄の小林一三氏は沿線に宅地を造成し開発利益を創出、また大阪の中心から離れた宝塚に歌劇・遊園地等の拠点を創り鉄道の利用率を高めるなど、多角的手法により鉄道の建設費用を確保した。
    (開発利益還元型)
    もう一つの開発費用捻出方法は、鉄道開設に伴う地価上昇が鉄道周辺住民の固定資産税の増額を生み、役所に増収をもたらす事から市に相応の出資を求める方法である。(出資型)
    (3)交通の需要予測の考え方
    地域間の移動手段や、夫々の手段による移動人数等を変数として、「4段階推定方式」により交通の需要予測が実施されている。交通については他の需要予測に比べより緻密な予測値を算定しているが、実際に予測通りの結果になるかは難しいのが実情である。
  2. AIIoTがもたらす交通革命
    (1)AIとは何か
    AIの基本構成は、ある入力に対し機械が判断し出力するというものであるが、この判断は、従来に比べ圧倒的に多量のデータ(ビッグデータ)が取れるようになった事から、機械がこのデータを使った学習(deep learning)により、判断力を高め、且つコンピュータ技術を駆使し迅速な出力を可能にするというものである。またデータ自体その量の多さに加え、種類(質)も進化している。
    ①入力
    システム・センサー技術等の発達により画像認識等も高度化している。最近 では感情を読み取れる技術発展もあるようである。
    ②処理
    グラフや表による見える化、IoTを使った検出物の劣化状態の把握、通信技術 の進化(5G等通信技術他)などにより処理スピードも迅速化している。
    ③論理
    蓄積データからの検索・プランニング、コンテクスト(文脈)からの推論プランニングの最適化、対話・質疑応答も可能
    ④出力
    画像、音声、バーチャル・リアリティ、ロボット等により出力。
    このように、AIはその構成により外部からのインプットがあると、機械が計測し、判断し、実行に移すループの中で計画を最適化する。その際に出力されるデータは更に蓄積・フィードバックされ、益々AIの力を高めて行く。こうして将来はAIが人知を超えるシンギュラリティの時代が訪れるかも知れない。
    (2)自動運転の現状
    さて、それではAIは交通に如何なる影響をもたらすのか。自動運転の分野ではインフラ協調型として道路と一体になり、自動運転を開発する方法があるが、これまでの処この方式は中々進展がなく、車にセンサー・カメラを備えて周囲の状況を捉えながらの開発が進められている。最近米国で自動運転車の事故があり水をさされた感があるが、大きな流れは変わっていない。
    自動運転技術はレベルが0~5の段階で表示され、現在は車の前後左右をコントロールしてドライバーを支援するレベル2の段階にある。レベル3では特定の場所でシステムが全てを操作出来るが、緊急時はドライバーが対応するというもので、本年中にこのレベルの車が発売される可能性もある。レベル4では特定の場所でシステムが全てを操作、また最終のレベル5では場所の限定なくシステムが全てを操作する段階に到達する。現在様々な地域で実験がなされているが、地方都市・山間地等で地域限定の完全自動バスを走らせる計画もある。将来的にはタクシー、バス、乗用車が完全自動運転化される可能性がある。鉄道についても自動運転化の開発が進められている。
    (3)AI活用事例・マッピング
    AIについて現状では未だ人の眼には余り目立たないが、ホームからの転落防止、問合せ対応、遅延時間予測、列車の混雑予測、多言語案内、接客・案内の自動化、ダイヤ改正の支援、データの集約・分析等、幾多の活用事例がある。これら各事例の現状と将来動向について「事例マッピング」に纏めてみた。
    ここで言える事は、現状AIは車の配車等「オペレーション分野」で実用化され最適化が進んでいる。また「メインテナンス分野」でも常時カメラ等で情報を捉え分析を行うなど実用化が進んでいるが、「計画分野」では実験段階・技術開発段階にあると言える。未だ交通革命に繋がる域にまでは達していないのが実情である。何か別の画期的な技術が出て、相俟ってブレークスルーが生じる可能性はあるが、今暫くの間は静かな時代が続くかも知れない。

<山内弘隆先生プロフィール>

1985年3月  慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了
1986年4月~1987年3月  中京大学商学部講師
1987年4月~1991年3月  中京大学経済学部講師
その後、一橋大学講師・助教授を経て
1998年4月 一橋大学商学研究科教授
2005年1月~2008年12月  一橋大学商学研究科長兼商学部長
2017年4月~ 一橋大学大学院経営管理研究科教授

講演風景1

【Y】The Young Salon第28回講演会を開催しました

【テーマ:運動器って何?肝腎カナメの股関節】

4月7日(土)、第28回The Young Salonの講演会を開催し、59名の皆様にご来場頂きました。講師は前々回に続き当国分寺三田会の会員、古賀さんの紹介により、東京ヒップジョイントクリニック院長狩谷哲先生をお迎えし、演題「運動器って何?肝腎カナメの股関節」の下、約2時間の講演を頂きました。先生は1969年長野県松本市に生まれ現在49歳、これまでに執刀された手術件数は約1,300件、現在毎月平均20件の手術を行ない、また定期的にリハビリに通う患者数は約500人の方がおられるそうです。本講演会では狩谷先生よりシニアの一般的な運動疾患の種類や症状、運動機能の低下が原因の腰痛、股関節患者の手術などについてお話を頂きました。続いて理学療法士(小山やよい氏・鈴木直揮氏)により様々な腰痛撃退体操について紹介され、最後にQ&Aのコーナーでは活発な質疑応答が展開されました。加えて、今回狩谷先生の著書「1時間で股関節痛が嘘のように消える、人生が変わる股関節手術」が配布されたので、ご講演の内容と併せ皆様には今後有効活用して頂ければと思います。尚、追加の質問等あれば、末尾に記載の「東京ヒップジョイントクリニック・ホームページ」にアクセスして頂ければと思います。それでは、ご講演の概要を下記に紹介致します。
【講演概要】
狩谷哲先生による講演
人が自分の体を自由に動かす事が出来るのは骨、関節、筋肉や神経で構成される運動器の働きによるものである。この機能が低下すると、元気に動き回る事が困難になり、要支援や要介状態になる危険が高くなる。健康寿命は現在男性・女性で平均寿命より夫々9.13年・12.68年下回っており、この原因は下記に示すように運動器の機能低下(ロコモティブシンドローム)に因るところが最も大きい。
<1位>運動器の障害  <2位>脳卒中  <3位>認知症
・     平均寿命(A) 健康寿命(B) (A)-(B)
・男性    79.55      70.42      9.13
・ 女性    86.3        73.62                 12.68

体には数多くの関節があるが、最大のものは股関節で、骨盤と脚の骨を繫ぎ、また上半身と下半身を繫ぐ要の関節である。私達の「立つ」・「歩く」・「走る」等の動作を安定して行えるのも運動器のお蔭であり、「股関節」は体の中で最も大きく且つ酷使されている。
股関節疾患の代表例が「変形性股関節症」である。関節を滑らかにする為のクッションの役割をしている関節軟骨がすり減ったり、関節が変形したり、硬くなったりする病気である。わが国の患者数は数百万人と推定される。
治療には保存療法(薬物療法、運動療法・筋力強化、体重管理、温熱療法)と手術がある。
手術を受けるか判断する上で重要な事は「現在の日常生活での支障・何に困っているか」と、「今後どうしたいか」である。手術により痛みは取れるが、術後は患者本人がリハビリにより筋力や柔軟性を養う事が大切である。日本では手術は総合病院で行う事が一般的であるが、欧米ではプライベートクリニックと病院が提携して人工股関節置換術を行う特化型システムが採られ、術後も集中的に看護・リハビリテーションを行なっている。この仕組みが手術の待ち時間、入院期間の短縮、医療費の削減等に繫がっており、東京ヒップジョイントクリニックはそのメリットを取り入れ開院したものである。当院で行う人工股関節置換術に要する時間は平均50~60分、術後は手術の翌日から起立訓練を開始し、10日前後で退院可能である。入院と手術の費用は約200万円であるが、高額療養費制度の利用と3割負担で自己負担額は10万~20万円である。
手術の方式も当院ではナビゲーション使用の最小侵襲手術(MIS)により筋肉など体への負担を最小限に図っている。手術後、人工股関節不具合等による再手術の割合は10%~15%である。

理学療法士(小山やよい氏・鈴木直揮氏)による講演
腰痛の原因は多々ある。診断は難しく85%の患者は特定困難であるが、股関節も原因となる。
股関節の動きが悪くなると、骨盤の動きが悪くなり、背骨が代償。これが背骨についている筋肉を過剰に働かせ腰痛を引き起こすものである。予防としては、

①. 体重の維持または減量
注意すべきは肥満であり、体重の維持または減量に努める事が大切である。1kg体重増加による股関節への負担は3~7倍増加する。肥満を判断する体重と身長の関係はBMI値で示され、この値を25未満に維持する事が大切である。
【BMI値】:体重÷身長(単位:メートル)の2乗=25以上の場合⇒肥満
例:70kg ÷(1.7m)²=24.22<25:⇒25未満の場合は普通体重として問題ない
②. 適度な運動の継続
③. 体を冷やさない
④. 過度な飲酒は避ける
推奨する1日平均純アルコール量は次の通り。また週2日は休肝日を設けると良い。
・ビール(中ビン1本)、日本酒(1合)、ワイン(グラス1.5杯)、缶入り酎ハイ(1.5缶)
⑤. 長時間の座位姿勢は禁物

【腰痛撃退体操コーナー】
★股関節の異常チェック、正しい座り方、
★腰痛撃退!簡単股関節体操:①「骨盤運動」、②「ハムストリングスストレッチ、
③「テニスボールを使った臀部のストレッチ」、④「大腿四頭筋ストレッチ
★体幹を鍛えるトレーニング①、②
以上本日の講演概要ですが、本講演を通じて更にご質問等あれば下記宛てメールでご連絡頂
ければ先生より回答頂けますのでご利用下さい。
講演会後、28名が西国分寺駅近くの居酒屋に集合、美味しいお酒と料理で盛り上がりました。

【連絡先】
東京ヒップジョイントクリニック
https://www.tokyo-hip-joint.clinic/
電話:03-5931-8700(完全予約制)
東京都世田谷区南烏山6丁目36-6 3F

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世話役 前原憲一

【Y】第27回The Young Salon講演会を開催しました

【テーマ:激変する大学】

2月24日(土)、第27回The Young Salon講演会を開催し、25名の皆様に出席頂きました。講師には早稲田大学人間科学学術院の永岡慶三教授をお迎えし「激変する大学」をテーマに約2時間のお話を頂きました。私達は慶應義塾を卒業してから既に相当の年月が経過しており、大学が現在どのような状況にあるのか懐かしさも抱きながら耳を傾けました。永岡先生は教育工学を専門としており、携帯やインターネットなどのテクノロジーを利用した教育方法を駆使し、大教室でも有効な双方向性のある授業を行なっています。その根底にあるのは教育の場を単に従来のような「知識を得る場」から「知識を自律的に獲得する体質涵養の場」に持って行く事が重要とする考え方にあります。講演の概要は下記の通りです。

 技術的特異点(シンギュラリティ)と言う仮説がありますが、これは人工知能(AI)の発明が急激な変化を引き起こし、人間文明に計り知れない変化をもたらすというものです。将棋では人間がAIに敗北したとしても、囲碁で負けるにはあと10年もかかるだろうとの予測がたったの1年で実現してしまった事を考えると、2045年以降はAIが人間の能力を凌駕してしまうという考え方も現実味を帯びてきます。

高等教育方法の歴史を見ると、エリート⇒マス⇒ユニバーサル化へと変化しています。日本では高等教育への進学率はマスの段階で大成功を収めましたが、今やユニバーサルの段階へと進んでいます。その背景は、現在日本の大学の授業料は、国立:52万円、文系私立:75万円、理系私立:150万円と高額であるので、対策として①大規模化して授業料を下げるか(⇒結果として質の低下を招く恐れ)、②少数精鋭にして税制で補助(⇒大学に行かない人も負担する事になる)する方法が考えられますが、いずれにしても問題があります。

そこで、授業料を抑え且つ質を高める為の方策としてe―ラーニングが挙げられます。これはICT(Internet Communication Technology)を用いて行う能動的学習方法であり、「誰でも、いつでも、どこでも、何度でも」学ぶ事が出来ます。e―ラーニングを利用したe―スクールでは、学んだ知識を基に学生同士の討論の場を設けます。育児中の人も超多忙なスポーツ選手でもこの方法で学ぶ事ができます。早稲田大学では現在1,000人のe―スクール生がおり、実はスケートの羽生結弦選手も相撲の旭鷲山関もe―スクールで学んでいました。

更には、MOOC(Massive Open Online Courses)があり、ハーバードやMITでは10万人規模となり、2016年現在全世界で3,500万人以上が自宅での空き時間や、通勤・通学時間等を利用して受講しています。講座数も今や4,600を数え、これまでの処、授業料無料で運営されています。MOOCでは卒業証書は出ませんが、終了証書は出ていると思います。ウランバートルの高校生がMOOCだけの(遠隔)学習でMITに合格した例もあります。

またWestern Governer’s Universityのように、e―ラーニングのみで成立している大学もあります。ここでは学習時間を基礎とした単位制は取らず、コンピテンシー(試験やレポート等を通じた能力評価)のみで単位が与えられています。但しメンター(教育コーチ:指導者)の存在は必要であり、この養成が結構大変であると考えています。

現在の大学は20世紀に成立したテクノロジー基板上に構築されていますが、私は次世代教育システムを是非再考すべきであると考えています。今後の高等教育は大学から大教室を追放し、「e―ラーニング」と「ゼミ活動」に集中して行うべきです。知識やスキルは大学で教えて貰うのではなく、自ら醸成する体質が涵養であると考えています。  ラーニングピラミッドという学説があり、知識の定着率は:講義を聞く事⇒読む事⇒・・・⇒グループディスカッションの順に高まりますが、「人に教える事」で最大化する事が分かっています。子供に教える事を頭に描きながら、知識を吸収する事が大切です。

最近の私の研究テーマとしてセミナーマネジメントシステムの研究開発があります。スピーチする学生が自分で評価をし、お互いに評価し合い、自分にフィードバックし、振り返りながら自分を成長させて行くことを支援する方法です。

 社会環境は確実に変化してきています。教育システムを変えるのは、テクノロジーだけでなくそれを取り巻く制度、社会、文化の受容が必要なのです。

電話を発明したグラハムベルが、その使用について役所に願い出た時は、それまでの電信に比較して記録が残らない等々を理由に中々許可が下りませんでした。またQwertyという言葉がありますが、これはタイプキーの左上に配列された文字で「旧弊」を意味しています。当時タイプは機械式であった為、使用頻度の高いキーを並べるとハンマーが擦れて壊れてしまう事から考えられた配列ですが、今は電磁式であるのでその心配はないのに旧い配列が継承されている旧弊の例です。必要とあらば旧い仕来りは勇気を持って変える事が必要であると考えています。

講演会終了後、有志が講師を交え懇親会を行い、大いに盛り上がった1日となりました。

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世話役:前原憲一

【Y】第26回The Young Salon講演会を開催しました

【テーマ:脳梗塞を防ぐ心房細動の最新治療】

 11月4日(土)、第26回The Young Salonの講演会を開催し、56名の多くの皆様に参加頂きました。講師は当国分寺三田会の会員、古賀さんの紹介により、東京ハートリズムクリニック院長、桑原大志先生をお迎えし、「脳梗塞を防ぐ心房細動の最新治療」をテーマに約2時間の貴重なお話を頂きました。私達に大変関心の深いテーマであり、お話の中で専門用語もありましたが、出席者は講演の内容を熱心に聴き入っている様子が覗え、且つ桑原先生自身の著書が配布されましたので、本日のお話を更に良く理解する為の手引きとして今後有効活用させて頂ければと思います。心房細動不整脈は脳梗塞や心不全となり得る不整脈で国内の患者数は170万人に上るとも言われておりますが、心房細動の根本的な治療法としてカテーテルアブレーションがあり、桑原先生はこの治療で世界トップクラスの治療実績を持っています。

【講演概要】

【1】心房細動とは

心房細動はその出現様式や持続時間により3種類(発作性、持続性、慢性)に分類される事、心房細動は心房細動起源という異常な心房筋による高頻度の興奮や、一旦始まった心房細動を持続させる心房細動基質が原因である事、心房細動が発生すると他の部分にも伝導され、規則性がなくなり血栓等を発生させこれが脳梗塞等を引き起こすものである。

心房細動の原因は下記の通りである。特に①、②、③は3大原因と考えられている。

  1. 加齢:歳をとると心臓も疲れ、傷み、心房細動の原因となる心房細動起源や心房細動基質がつくられる。
  2. 高血圧、心臓病:高血圧による心臓へのストレス、また心臓病は心臓への負担をかけて 心房細動の原因となる。
  3. 飲酒:節度のある飲酒が必要である。ビールは中ビン1本、日本酒1合、焼酎0.6合、ウイスキーダブル1杯程度であれば、例え連日飲酒しても心房細動を含め健康被害は免れる。上記飲酒量の3倍以上は多量飲酒となり心房細動発症のリスクを高める。
  4. 睡眠時無呼吸症候群:無呼吸中の低酸素血症が心臓に負担をかけ心房細動になり易い。
  5. 甲状腺機能亢進症:甲状腺で全身の細胞の活動を活性化させるホルモンが必要以上につくられると、眼球突出や頻脈などの症状が現れる。この頻脈の一つが心房細動である。

心房細動の3大症状は動悸、息切れ、めまいであるが、心房細動の患者はそうでない人に比較して約5倍の確率で脳梗塞を引き起こすと言われている。また日本人の死亡原因は平成25年には癌、心臓病、脳血管障害の順に多いが、脳血管障害の4分の3が脳梗塞である。以下、心房細動が引き起こす重病について述べる。

  1. 脳梗塞:脳梗塞とは脳を栄養する血管が閉塞し、脳が壊死に陥る病気であるが、心房細動による脳梗塞は重症化し、しかも全く予兆がない。心房細動が死亡のリスクを上げる最たる要因が脳梗塞である。
  2. 認知症:心房細動と認知症の関係のメカニズムは不明であるが、心房細動が血栓を生じやすい事などを考えると、長期間血栓が少しずつ脳に飛び小さい血栓ができて、徐々に脳機能が低下する可能性がある。
  3. 心不全:心不全は心臓の機能が低下し、体が必要とするだけの血液を送り出せず、息切れなどを自覚する状態を言う。心房細動による早い心拍が続くと心臓は疲弊し心不全を発症する。
  4. 心筋梗塞:心筋梗塞患者全体から見ると、その原因として心房細動を有している人は少ないが、心房細動の患者が急激に激しい胸痛を自覚する場合は、心房内にできた血栓が、心臓が栄養とする冠動脈を閉塞した事が考えられる。

【2】心房細動の治療法

心房細動が発症したら何らかの治療方法が必要で、対症療法の薬物療法と 非薬物療法(カテーテルアブレーション、外科手術)がある。

(1)心房細動の薬物療法
薬物療法は症状の緩和と脳梗塞の予防が目的であり、3つの方法がある。

  1. 抗凝固療法(脳梗塞の予防) 心房細動になると心臓内の血流が滞り、血液の塊である血栓が出来やすくなりこれが脳に詰まると脳梗塞を発症するので、血液をさらさらにする薬の投与が検討される。薬剤としてはワルファリンとDOAC等がある。
  2. リズムコントロール(症状の緩和) 心房細動そのものが起きないように、または起きても直ぐに治るようにする治療方法であり、薬剤としてはアオダミンなどがある。
  3. レートコントロール(症状緩和、心機能悪化の予防) 心房細動はそのままにして、心房細動によって心拍数が速くならないようにする治療方法であり、薬剤としてはベラパミル、ビソプロロール、ジギタリスなどがある。

(2)カテーテルアブレーション
心房細動起源や心房細動基質を探し出し、カテーテルの先端を押し付けて 電気を流しその心筋を焼く治療である。ターゲットの多く(85%)は肺静脈 にある。

カテーテルアブレーションにより心房細動がどの程度治るのかは、様々な条件により異なり、また心房細動期間が短い程高くなる。因みに、発作性心房細動(心房細動の発作が1週間以内に治まるもの)に対するカテーテルアブレーションの治癒成功率は、1回の治療で1年後に70%、5年後に60%。再発した患者が再度アブレーションを受ける事により、最終アブレーションの1年後に90%、5年後に80%の人が再発なく過ごせている。

心房細動により心臓が拡大し心機能が低下した患者の多くはカテーテルアブレーションにより心臓は小さくなり心機能も改善する。但し、全ての医学的治療について言える事であるが、カテーテルアブレーションによる脳梗塞、心タンポナーデ(心臓に穴が開く)、食道炎等の合併症がある。

【3】心房細動にならない為には、

健康的な生活習慣を保つ事が大切であり、鍵を握るのが食事と運動である。諸悪の根源は肥満であり、体重/(身長)が25以上の場合は体重削減に努める必要がある。但し、急激に体重を減らすのは禁物で年間に5~7%の削減に留める事が適切である。

食事: 五大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル)をとる事に心掛け、バランスのとれた食物を毎日規則的にとる事が肝要。飲酒については既に述べた通り飲み過ぎない事が大切である。

運動: 有酸素運動を日々継続して行う事が必要。全く汗をかかない運動では健康改善効果は得られにくく、一方やり過ぎは心房細動のリスクを高めてしまうので注意すべきである。

以上本日の講演の概要ですが、心臓医療・不整脈等について疑問点や質問などあれば下記宛てメールで連絡頂ければ、先生より回答を頂けますので、是非ご利用下さい。

尚、講演会後は、23名が西国分寺駅近くの居酒屋に集合し、美味しいお酒と料理で盛り上がりました。

【連絡先】

東京ハートリズムクリニック

電話:03-6371-0702

東京都世田谷区粕谷3-20-1

Mail:info-thr-tokyo-heart-rhythm.clinic

東京ハートリズムクリニックホームページ:www.tokyo-heart-rhythm.clinic

世話役:前原憲一

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【Y】第25回The Young Salonの会ご報告

【テーマ:乱世に生きる】

7月20日、新現役ネットの会主催のフォーラム「五百旗頭真氏を迎えて」、「テーマ:乱世を生きる」に参加しました。会場は東京都中央区日本橋の東京証券会館ホール、The Young Salonの会からは6名の皆様に参加頂きました。

当フォーラムは主催者側理事長岡本行夫氏による導入講演、五百旗頭真氏講演(乱世を生きる)、最後に両氏の対談と言う形で実施されました。

五百旗頭真氏によれば、現在の乱世は室町時代にとめどなく続いた「応仁の乱」に劣らぬ乱世であると評しています。この乱をもたらした要因は何か、いつまで続くのか、わが国はこの乱世を如何に生きていけば良いのか等、実に興味深く有意義なフォーラムでありました。

【Y】第24回ヤングサロンの会を開催しました

【テーマ:地方自治~現場の苦悩と喜び~】

 5月21日(日)、前国分寺市長、星野信夫さんを講師にお迎えし講演会を開催しました。開催場所も、星野さんにとっては市長時代に誘致を決めた思い出のある都立多摩図書館。天井も高く好環境の中で熱のこもった素晴らしい講演会でした。
講師は2001年に第5代国分寺市長に初当選され、以来2013年に退任されるまで、3期12年間の長期に亘り務められてこられました。まちづくりの理念として「共生、参加、創造」を、またスローガンとして「改革断行」を掲げて市政を担当してこられました。この間、「職員に支えられ市民に応援され市政を務められたと思う」と冒頭で述べられた感想が印象的でした。以下、就任当時の状況および大型事業への取り組みに的を絞り報告します。

 記

市政を振り返り:
最初の仕事は地域に相応しい「都立武蔵国分寺公園」の命名であった。最初の難題となったのが西国分寺駅東地区の再開発事業である。この案件は西国分寺駅近くに市民文化会館を建設する事業であったが、建設の是非を巡って議論の末住民投票が実施され、結果僅かに反対が賛成を上回り、幾多の経過を経て市民文化会館建設計画は廃止され、民間のスポーツクラブが建設される事に変更された。
市政に関して:
市長は市民から直接選挙で選ばれるので大きな権限を持ち、様々な案件の提案権を持っているが、あくまで決定権は議会にある。また国分寺市政は初代より保守、革新の市長が毎回入れ代わり、長期開発案件を遂行するには困難が伴う状況にあった。加えて国分寺市は府中市や小平市等と異なり、大規模事業所がなく市の歳入は個人市民税が中心である事から、大きな開発案件の遂行は財政的に困難な下地がある。一方、国分寺市の人口は市設立の当初5万6千人であったものが、高度成長期の波に乗り都内からの移動も多く人口が急激に増加し、現在は3倍の12万人に達している。こうした人口増加により下水道の整備・学校建設・ごみ処理施設の整備が急がれた。下水道の整備等では多額な借金を余儀なくされたが、バブルの崩壊と共に経済環境が悪化した為、多額の借入金返済に追われ、開発案件の計画・遂行上大きな障害となった状況がある。バブル崩壊後の失われた20年は国・地方の財政を著しく悪化させたが、実にその内の12年間が星野市政の期間でもあった。更に急速な少子高齢化が進み社会保障費が増大した時期にも重なっている。
国分寺駅北口再開発事業では:
1965年初代市長の代に最初の計画が掲げられたが、反対が多く長期に亘り進展がなかった。その間「開発よりも福祉優先」等の声が大きく挙がっていたが、星野市長は当再開発事業を継承し進める事とした。事業を進める上で大きな問題は地域に187名もの多くの権利者がおり、権利調整が難航した事であるが、その上2001年から始まったITバブルの崩壊が税収の大幅低下を招いた事が追い打ちをかける事となった。
一方、下水道の整備は開発工事と同時に着手すべきとの考え方から、駅周辺の下水道 が未整備状態にあり、一刻も早く開発工事を進める必要に迫られていた。更に万一開発を止める様な事になれば、損害賠償の問題等も発生する恐れがある為、事業の中断は許されず、如何に計画変更で難局を乗り越えられるかに焦点が絞られた。解決案として出されたのが、建物の建設場所を駅の近くに移し、建物の価値を高める事により商業床の販売収益を増加させ、以て開発費用の確保をする事であった。これにて一件落着と思いきや、またもやリーマンショックにより商業床が売れない事態が発生した。この問題については、「建物のスリム化と高層化」、且つ「商業床の多くを住宅床に変更」する事で開発事業は成功する目途が立った。市の想定を大幅に上回る額で落札され、建物除却の予算をつけてバトンタッチした。
ごみ処理の問題では:
複数の自治体で焼却炉を持つ場合は東京都から補助金が出る事や、大きな焼却炉設置による経済性、環境整備、自家発電設備保有等の利点がある事から平成16年、小金井市からの依頼により国分寺市と共同でゴミ処理する為の協議を開始した。
小金井市からは平成20年3月までに二枚橋近くにゴミ焼却場用地を確保する旨、またそれまでの間、小金井市のゴミを国分寺で処理願いたいとの申し出であった。しかし用地確定が出来ず問題が発生した。最終的に日野市長の決断により、国分寺及び小金井両市のゴミを受け入れる事で決着する事になった。当時日野市長はこの決断により逆に住民からの批判を招く事にもなったが、正しく日野市長の英断により難局が解決された次第である。
尚、日野市及び小金井市はゴミの減量化で現在全国一の優良自治体と言われているが、国分寺市は未だその域に至っていない。
都市計画道路整備について:
国分寺駅から北に登り、本多公民館の辺りで交わる道路が3・4・6号線(東西道路、日立中央研究所北川の道路)であるが、この道路は日本で一番時間がかかっている都市計画道路と言われている。新しい計画で道路が鉄道と交差する場合、立体交差とすべき事が道路法で定められている。この道路は西武線2本と交わるが、道路立体化には多額の費用がかかる為、都とも相談しながら進めているが、今後に残された課題もある。
都道3・2・8号線(南北道路、新府中街道)は中央線・西武線交差部分以外平面交差に改め計画推進中。この道路では小平市での反対運動は住民投票迄実行されたが、一応の決着を見ている。
講演出席者の質問に応え下記発言された事が印象に残っている:
大学は慶應義塾の経済学部、加藤寛ゼミで経済政策を勉強した。強く印象に残っている先生の言葉は、「マルクスは間違っていた。しかし、政策を論ずる者はマルクスの社会を変えて行こうとする社会的情熱に学ばなければならない」という言葉であった。
講演会後:
西国分寺駅近くの居酒屋に20名が集まり、大いに盛り上がった一日でした。

【Y】第23回The Young Salonの会を報告します

【テーマ:ラテンアメリカから日本を考える】

3月25日(土)、ラテンアメリカ協会の専務理事、工藤章氏をお迎えしての講演会を実施し、31名の多くの皆様に参加頂きました。中南米諸国で構成するラテンアメリカは6億人を超える大きな市場であると共に同地域には200万人を超える日系人ネットワークがあります。
食料資源も鉱物資源も豊かなこの地域は、わが国にとりこれまで少し遠い世界と考えられてきましたが、親日的な地域であり、近年日本企業の進出も目覚ましく、今後共大切な存在として協力関係を発展させていく為、ラテンアメリカ協会がは動を続けているという事です。
講師は商社マンとして同地域に通算22年の長期に亘り駐在されたご経験から、地域の政治・経済・文化・社会状況をいくつかのキーワード(註)を基に様々な角度から解説され、私達は書物等からは中々得られない貴重な生の姿・情報を得る事が出来ました。今後共絶えず激動を続ける世界にあって、共に発展する国際社会のパートナーとして同地域との関係を強化して行く事が大切と考えます。
(註)単一民族、民主主義、女性の活躍、地域統合、食糧、企業のグローバル化、日本の海外依存、日系人、外交、日本の海外援助、世界平和、豊かさとは

【Y】ヤングサロンの会で拓殖大学の公開シンポジウムに参加しました

【テーマ:BRICsは輝きを取り戻せるか】

12月3日(土)、拓殖大学国際フォーラム第2回公開シンポジウム『テーマ:BRICsは輝きを取り戻せるか~拍・露・印・中、その現状と展望』が開催され、ヤングサロンの会より7名の皆様に参加頂きました。開催地は国分寺から少し離れた拓殖大学文京キャンパス(文京区茗荷谷)、東京メトロ・丸の内線の茗荷谷駅から歩いて4~5分の距離です。

シンポジウムは前段でBRICs各国を専門とする4名の教授陣から、夫々の国の特性・現状・問題点等が紹介された後、後段に渡辺利夫学事顧問(前拓大総長)の司会でパネルディスカッションに入りました。BRICs諸国の将来を占う上でどの様な要因(下記)が鍵となるのか、どの様な成長が期待出来るのか、様々な視点から活発な意見が交わされました。久しぶりに高度に専門的な経済シンポジウムをわくわくしながら聴取した一日でした。

  1. 「経済の発展経路理論」
    英国の産業革命から始まった先進国の技術・資本が次々と後発国に伝播されBRICS諸国はその利益を享受し今後発展が期待されるとする理論。
  2. 「経済のパターン(サイズ)論」
    人口が少ない程、対外経済の接触の度合い(GDPに占める輸出入・直接投資の割合)が高くなるという理論。この理論に従えば大国であるBRICS諸国は接触度が低くなる筈であるが、現状で中国が高い位置にあるのは何故か。
  3. 「技術革新論」
    「技術革新」により生み出された技術はその後標準化され、後発の事業者が技術を使用し、商品が製造・販売されるが、利益の大部分は長期に亘り当初技術開発者に帰属し、後の製造業者の手元には余り残らないとする理論。この理論ではBRICs諸国は多くを期待出来ない。
  4. 「人口ボーナス論(中進国の罠論)」
    労働人口(15歳~65歳未満)の増加率が65歳以上の労働者の増加率を上回る時期は人口ボーナス期と考えられ、成長率が高まるので、後発国の発展に有利と考えられるが、他方で人材、職場、金融インフラ等の整いがなければボーナスが使えないとする理論。
  5. その他、そもそもBRICS諸国を一つの対象と考える事自体が適切かとする議論等。