2025年2月16日(日)多摩図書館2階セミナー室にて24名参加の下、第51回The Young Salonを開催しました。国分寺市防災安全課防災まちづくりご担当の秋元武志係長及び蛭田萌氏のお二人を講師にお迎えし、国分寺市の防災関連のとりくみをテーマにお話しいただきました。講演の概要は以下の通りです。
記
第一部 防災まちづくりの取組みについて
1.国分寺市の防災都市づくり
国分寺市は昭和49年に防災都市づくりを開始、昭和50年~51年の調査・研究の結果を昭和52年に「あなたのまちの防災診断」と題して昭和52年に市報で公表、翌年それらを集約した「災害危険区域図」と「災害危険度表」を作成して全戸に配布。多くの関心が寄せられ、市民の防災に関する積極的参加に繋がっている。
2.防災まちづくり推進における個別事業
(1)市民防災まちづくり学校と市民防災推進委員会
自分たちのまちを自分たちで守れる市民を育てることを目的に「防災まちづくり学校」を開設。担当職員や専門家或いは防災活動を行っている市民を講師とし、自助・共助をテーマに学習してもらい、7割以上の出席者を修了者として認定、更に自らの地域で防災の普及・啓蒙活動を行うという申し出のあった人を市民防災推進委員として認定、推進委員同士の交流や学習の場として昭和59年6月に市民防災推進委員会が設置された。
(2)防災まちづくり推進地区
地域住民の発意をもとにした地区単位の防災計画の策定、地区の安全な環境づくりと防災活動体制づくりを目指して市と指定エリアとしての協定を結んだ地区を防災まちづくり推進地区と呼ぶ。
防災まちづくり推進地区は在宅避難者の支援のための防災計画を策定する。また推進地区の人たちは災害時に在宅避難者の支援のための地区本部を立ち上げ、市の災害対策本部は地区本部との間で安否確認や必要な物資の情報交換を行う。
3.市民全体の防災まちづくり
住みよいまちづくりの為に、市民防災まちづくり学校で自助・共助を学ぶ→卒業生が市の防災推進委員として活動→防災まちづくり推進地区の誕生、というサイクルがうまく回るように市として力を入れて支援していく。
現在国分寺市が協定をむすんでいる防災まちづくり推進地区は16あり、市内の面積の約半分を占めるが、将来的には市内全域が防災まちづくり推進地区となってもらいたいと考えている。
第二部 防災時の備えについて ― 防災講座
1.東京都の新たな被害想定と大地震発生に伴い生じる危機
東京都は令和4年5に首都直下地震の被害想定を見直したが、都市部に大きな被害をもたらすと見られる多摩東部直下地震はマグニチュード7.3、最大震度7で、都内殆どの地域で震度6弱から6強の揺れとなり、広い範囲で大きな被害が発生すると言われている。
国分寺市内では建物全壊452棟、半壊1,712棟、準損壊・一部損壊は半壊の数十倍、火災による焼失建物932棟、死者48人、負傷者886人、避難者約1万8千人、帰宅困難者約1万1千人と想定されている。またライフラインに関しては、電力・通信の被害率は数%だが、その影響で計画停電や通信障害が発生しうる。上下水道についても、埋設管の耐震化が進んでいるものの、一部地域では使用できなくなる。これらのライフラインの復旧には一月ほどかかると見られている。また、地面の隆起や建物倒壊により、市内の多くで道路閉塞率が15~20%になり、逃げたくても逃げる道がない状況にもなりうる。延焼火災に関しては、同時多発火災が発生して鎮火までにはまる一日以上かかると想定されている。
2.地震が起きたらどうするの
地震が起きた場合、まず一時避難場所である近くの学校・公園や地区災害時退避所のような広くて安全な場所に避難する。一時避難場所とは、揺れが収まってから近隣の避難者が一時的に集合して様子を見る場所、または避難のために一時的に集団を形成する場所。一方、広域避難場所とは火災の延焼危険がある場合に安全を確保するためにまとまって避難する場所のこと。
次に、火災の延焼の危険がなくなり余震がある程度落ち着いたら、自宅の安全の確認に行き、安全の確保がとれていれば自宅に戻ってもらう。自宅が居住困難と判断された場合、市内の小中学校などに開設される地区防災センターへの避難をお願いする。地区防災センターは地域の防災拠点として、避難場所内の人のみならず在宅避難者への支援物資の配給なども行われる。また、市では近隣市と協定を結んでいて、近隣市の避難場所を利用することもできる。避難場所での生活では体調を崩しやすいので、可能な方は在宅避難や少し遠くの親戚・友人宅への避難を検討して欲しい。
大人一人に必要な飲料水は一日3リットルと言われており、これを目安に備蓄をお願いする。断水の場合、北町給水場と東恋ヶ窪配水場に災害時給水ステーションが開設される。また、地区防災センター内でも応急給水が実施される計画となっている。
大地震発生後スーパーやコンビニの生活必需品はすぐに品切れとなり、首都圏の物流機能も低下するため、一週間以上の食料を準備しておく必要がある。停電も考慮して1~2日目は冷蔵庫内のものを、2~3日目は乾麺類など普段からの買い置きを食べ、4日目以降非常食と考えれば、非常食は3~4日分の備蓄が必要。カセットコンロやボンベと合わせてパッククッキング用耐熱性ポリ袋も準備しておくと便利。
市の食料備蓄目標数は14万6千食で、帰宅困難者と災害業務に従事する市職員をふくむ避難者等の2日分を備蓄、3日目以降は都や国の備蓄及び物資供給に関する協定先から調達する計画となっている。飲料水に関しては避難者等の1日分の約6万リットルを備蓄している。
次はトイレの問題。トイレは下水道の無事を確認してから使うようにして欲しい。トイレが使えない時に備えて携帯トイレの備蓄が必要となりその数は (1人1日5回) x (家族の人数) x (7日分) で計算して欲しい。4人家族だと140回分必要で、それが無理なら少なくとも半分の70回分は用意して欲しい。
3.各自が取り組める自助・共助
災害時まずは自らの命を自ら守るための自助が基本となる。
始めに木造住宅の耐震補強の話で、最新の耐震基準である2000年基準での耐震化が100%になれば、死者数・全壊棟数を6~8割減らせると言われている。未対策の方は市の助成事業も利用して欲しい。
また、近年の地震での怪我の原因の3~5割が家具類の転倒・落下・移動によるものであった。家具転倒防止対策が100%施されれば、死者の数を8割減らせると推定されている。ご自宅に戻ってから家具の固定や物の配置を見直して欲しい。
次に出火防止について、阪神・淡路大震災や東日本大震災での出火原因の8割以上が電気によるもので、その多くが通電火災であった。通電火災を防ぐ一番の方法はブレーカーを落とすことだが、冷静にブレーカーを落とすことが難しい。その対策として感震ブレーカーという器具もある。感震ブレーカーや消火器の設置を推進することで、焼失棟数・死者を約9割減らせると言われている。市では感震ブレーカー支給事業を実施しているので、是非検討して欲しい。
続いて、食料や生活必需品の備蓄も自助の一部となる。
4.家族で防災会議
災害時に必要なことを家族で決めておくために、家族の防災会議を行ってみていただきたい。まずは普段住んでいる地域の情報を知るところから始めて、その後家族で集合場所や避難ルートの確認、安否確認方法など必要なものを決めていって欲しい。
参考となる情報が市作成の防災・ハザードマップ。全戸配布済だが市のホームページから見ることもできるので、確認しておいて欲しい。家族の安否確認には災害用伝言版が役立つ。東京都の公式アプリである東京都防災アプリの活用や東京暮らし防災と東京防災という都の冊子も有効で、冊子は都のホームページから見ることもできる。国分寺市の防災アプリも使えるようになったので登録していただきたい。
自助から共助へ、自分の身を自分で守ることができたら、次は自分たちのまちは自分たちで守ることを意識した取り組みをお願いしたい。災害時頼りになるのは同じ地域の人や近所の人の助け合いであり、周りの人と顔の見える関係づくりを進めていっていただき、共助を大切にして欲しい。
質疑応答
Q: 1日避難生活の経験があるが、一番大事だったのは情報の収集と共有だった。例えば病院がやっているか、道路が寸断されているか、といった情報を共有できるインフラとかその方法などを何か考えているか。
A: 災害時の情報発信拠点となるのは地区防災センターで、それ以外にも防災行政無線・市のホームページ・市の防災X・市の防災アプリなど様々な媒体を使って市民へのお知らせを行う。災害時は誤った情報も出回るので、必ず市の公式なものから発表されている情報を参考に行動してもらいたい。
Q: 今後地域単位の推進地区と自治会との関連ができるようになるのか。
A: 市が目指す推進地区とは、上から目線であなたの地域はやりなさいというものではなく、逆にやれと言っても、指定を受けるための要件を満たすには地域住民のかなりの体力と時間を要して、簡単にはいかない。自ら自分たちの地域が推進地区になるために組織を立ち上げ、自分たちは自分たちのことをやるので協定を結びたいという要請があった場合に、市が考えていく。
Q:推進地区とは防災のためで、実際に地震が起きた時に活動するものではないということか。
A:災害時に推進地区の人たちには地域防災計画に基づき在宅避難をする人たちの拠点となる地区本部を立ち上げてもらう。地区本部は市と連絡をとり、例えば必要な物資を挙げてもらい、市はその地区本部に物資を渡しそこから各家庭に配ってもらう。
推進地区ではないエリアの人たちは、個々に地区防災センターに行って情報を入手したり物資をもらったりと、個々に動いていただきたいと考えている。
Q:地域の活動状況はどこで知ることができるか。
A:防災まちづくり推進地区については、市のホームページで公開している。また、推進委員会がブログを立ち上げている、
Q:災害時一番の問題はトイレだと思うが、市のトイレの配備状況はどうなっているか。
A:公園とか公共施設に市が災害用トイレを設置しており、更に今その数を増やす計画を作成中で、国や都の補助を受けながら設置していく予定。但し、衛生面や安全面から、その管理までは市の職員だけではできないので、推進地区の方々にお願いしている。
また、市では家庭用防災用品購入補助事業を行っており、簡易トイレも対象品目に含まれる。今年度の申請は終了しているが、来年度も継続したいとおもっているので、家庭での購入を検討いただきたい。
以上
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