【C】第29回La Madre Cooking 開催報告

「骨正月の郷土料理を堪能」

今回のうたい文句は「温まる昔ながらの味をどうぞ!」。季節は‘雨水’の2月20日、三寒四温の天候に身体が面食らっている今の時節にピッタリの郷土料理でした。

献立は三品。具が沢山で栄養豊富な「鮭の粕汁」は汁物というより主菜。上品な‘あご出汁’に溶けた酒粕が塩鮭や野菜などのうま味と絡み合い、やさしくまろやかな味わい、何とも言えません。「つくねの照り焼き」は、玉ねぎと生姜のしぼり汁が鶏のうま味を引き立て、ご飯との相性が抜群でした。柚子のしぼり汁の風味が漂う「柚子大根の甘酢漬け」は爽やかな名脇役でした。
毎回のことながら、先生にあれこれ聞きながら調理に苦戦する時間は心のオアシスです。
また、先生から「昔は1月20日に粕汁を食べる習慣がありました」といった粕汁の発祥をお聞きし、粕汁への興味が一層かきたてられました。
以下に‘月20日と粕汁の深い結びつき’について簡潔に触れます。

1月20日は正月の終わりとなる節目の日といわれ、「二十日正月」とか「祝い納め」と呼ばれています。正月にお迎えした‘歳神様’が帰られる日と言い伝えられていますが、1月20日が「祝い納め」となった理由についての定説はないようです。
大晦日に用意した鰤や鮭などの「歳取り魚」を正月に少しずつ食べ、1月20日に骨になるまで食べ尽くすので、1月20日は「骨正月」とも呼ばれています。「歳取り魚」を最後まで食べきる工夫から生まれた料理が‘粕汁’や‘ぶり大根’、「始末の料理」とも呼ばれています。「骨正月」は‘SDGs’の‘食品ロスの削減’を真っ先に実践した日本が誇れる風習だと思います。
ところで、粕汁は地域によって多様です。京都の粕汁の具材は豚肉。有名店の粕汁は西京味噌がたっぷり加わり、深みのある味わいだそうです。大阪の粕汁は‘かやくご飯’がつきもので、池波正太郎は随筆「むかしの味」の中で好物だと高く評価しています。

鬼が笑うかもしれませんが、来年の大寒である1月20日は、京都で「粕汁」と「ぶり大根」で身体をポカポカにし、翌21日は東寺の「初弘法」で露店を廻り、身体がヒエヒエになったところでアツアツの「粕汁」をアテにして一杯。今からワクワクしています。
発酵食品‘酒粕’には肝臓を保護する働きや生活習慣病の予防効果があります。酒粕がタップリ溶け込んだ粕汁と末永く付き合っていければと思います。

「歳取り魚」…新年に‘歳神様’を迎えるためのご馳走‘歳取り膳’に供される魚。縁起物として、東日本では塩鮭、西日本では塩鰤が定番。

以下に当日調理した‘粕汁’と参加者の笑顔を掲載します。       (文責、写真:沼野義樹)

                                          以上