【Y】第39回ヤングサロン講演会を開催しました。

 2022年3月27日(日)、都立多摩図書館にて49名参加の下、第39回The Young Salonを開催、
講師として塾医学部卒業で国立がん研究センター中央病院感染症部長、塾医学部客員教授の岩田
敏先生をお迎えし、「現代の感染症とその対応について」をテーマにお話し頂きました。コロナ
が落ち着いてきたとはいえ、まだ気を緩められる状況ではなく、感染対策には万全を期した上で
の対面での講演会でした。また懇親会の実施は見送りました。皆さんが直面している新型コロナ
などに関する内容で、とても有意義な集いとなりました。講演の概要は以下の通りです。

                 記
The Young Salon第39回講演会
      テーマ:現代の感染症とその対応について
       -新型コロナウイルス感染症のパンデミックを踏まえて-
           国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院感染症部/感染制御室
                                     岩田 敏 様
■現代の感染症
  衛生環境の向上、ワクチンの普及(予防法の進歩)、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗原
 虫薬の開発 (感染症治療法の進歩)、診断技術の進歩等 感染症のコントロールは格段に進歩した。
 一方交通網の発達による感染症のグローバル化 、新興・再興感染症の発生、少子・高齢化社会に
 よる易感染患者の増加、耐性菌の増加等、感染症を取り巻く環境は変化している。
・新興・再興感染症
 新興感染症: 最近20~30年間の間で人類の疾病として初めて認識された感染症でHIV/AIDS、エボ
 ラ出血熱、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器 症候群(MERS)、ジカウイルス感染症、
 C型肝炎、成人T細胞性白血病、出血性大腸炎、新型インフルエンザ(A/H1N1)、 新型コロナウイ
 ルス感染症 (COVID-19)などがある。
 再興感染症: 一度は人類の重大な公衆衛生上の問題ではなくなったように見えたが,再度疫学相
 の変化を伴って増加してきた感染症であり、結核、マラリア、百日咳、季節性インフルエンザなど
 がある。
・2002-2003年 SARS(重症急性呼吸器症候群) 致死率 9.4%
・2009年 新型インフルエンザ 致死率 2-9% (日本:0.01%)
 死亡者は「季節性」では高齢者で多いが 「新型」ではほぼ全年齢にわたっていた
 日本: 2,200万人の患者発生に対して、死亡199名と少なかった
・2010/2011シーズンの流行状況をみて2011年より新型インフルエンザの指定がハズレ、季節性イン
 フルエンザとなった
 感染防止対策 ワクチン接種、治療薬(タミフル)の効果
・2015年 MERS(中東呼吸器症候群) 致死率 34.4%
■新型コロナウイルス感染症(COVID-19)(2019年~)  致死率 5.62%➡0.31%
 現在(2022.3.27)までの世界の患者数(4億8千万人)、死亡者数(6百万人)
 日本の患者数(6,285千人)、死亡数(27,614人) 全人口の約4.0%に相当
 新型コロナウイルスの懸念される変異株(ベータ株、ガンマ株、デルタ株、オミクロン株)
 重症化する人の割合は高齢者が高く、若者は低い傾向にある 。
 重症化する割合や死亡する割合は以前と比べ低下している
 重症化しやすいのは、高齢者と基礎疾患のある方、一部の妊娠後期の方
 重症化のリスクとなる基礎疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、
 心血管疾患、肥満、喫煙。 ワクチン接種を受けることで、重症化予防効果が期待できる。
■新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応
 感染防止対策 ワクチン接種、治療薬
 3つの密を避けましょう!
 感染リスクが高まる5つの場面:「飲食を伴う懇親会等」「大人数や長時間におよぶ飲食」「マス
 クなしでの会話」「狭い空間での共同生活」「居場所の切替り」
■新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のマネジメント(基本的な治療方針)
 重症度分類 「軽症」、「中等症Ⅰ(呼吸不全なし)」、「中等症Ⅱ(呼吸不全あり)」、「重症」
・ばい菌やウイルスがうつる道筋
 「空気感染」:はしか 水ぼうそう けっかく
 「飛まつ感染」:インフルエンザ かぜのウイルス 新型コロナウイルス おたふくかぜ ふうしん
 マイコプラズマ肺炎
 「接触感染」:おなかのかぜウイルス( -ロタウイルス -ノロウイルス)エイズウイルス 肝炎
 (かんえん)ウイルス 耐性(たいせい)菌( -ぶどう球菌 (MRSA) -緑のう菌 -カルバペネム
 耐性腸内細菌科細菌(CRE) -バンコマイシン耐性腸球菌(VRE))
・標準予防策 手洗いが対策の基本、サージカルマスクの着用
・基本的な感染予防 ワクチン接種
・新型コロナワクチンの種類と特徴
 不活化ワクチン、組み換えタンパクワクチン、ウイルスベクターワクチン、核酸ワクチン
 (DNA、mRNA)
■ワクチン接種状況 (日本のワクチン接種率 2022年3月25日報告)
 都内全人口(1回79.0% 2回78.4% 3回37.4%) 12歳以上(1回87.1% 2回86.4%  
 3回—–)
 高齢者(65歳以上)(1回92.8% 2回92.5% 3回77.4%)
 発症予防効果を維持するためには3回目接種を受ける必要がある
■ワクチンの有効性はどのように評価するか
 発症予防に対してワクチンの有効性90%とは?
 (✕)ワクチンを接種した90%の人は 病気にならない
 (〇)ワクチン接種すると病気になる確率が90%低くなる (10分の1になる)
■有害事象(副反応疑い)と副反応の違い
 有害事象(副反応疑い):ワクチン接種後に生じるすべての事象のこと(ワクチンとの因果関係が
 明らかなもの、不明なもの、他の原因によるものをすべて含む)
 副反応  ワクチンの接種によって起こる、免疫ができる以外の反応のこと
■がん患者に対する新型コロナウイルスワクチン接種
 新型コロナウイルスワクチンの接種はがん患者においても推奨される
        (休憩、室内換気)
■わが国の65歳以上の高齢者比率は世界一で今後も増加見込。それに伴い国民医療費も年一人34万円
 と増加し、65歳以上の医療費は全体の60%で年26兆円。2020年の平均寿命は、男性82歳
 (世界2位)、女性88歳(世界1位)。また健康寿命は、男性72歳、女性75歳。
■肺炎は日本人の死因のトップ5であり、 そのほとんどが 65歳以上の高齢者(97.8%)
・肺炎の負のスパイラル 高齢の方の肺炎は繰り返しやすく、入院などで体力が低下すると負のスパ
 イラル に陥りやすいため、肺炎の発症予防が重要である。
・65歳以上では、肺炎による入院で認知症の発症リスクが 約2倍に上昇するデータもある
■肺炎球菌感染症への対応  誤嚥防止対策、ワクチン接種、治療薬(抗菌薬)
                          (文責:小林(一) 文章作成・写真:青木)