【歴】第106回 歴史をひもとく会 開催報告

古代武蔵国の豪族たちと律令国家

第106回例会は3月17日(日)午後2時より多摩図書館セミナールームで、慶應義塾大学文学部准教授の十川陽一先生を講師に招き開催された。今回は一昨年第99回で講演頂いた「古代武蔵国のなりたち」の続編である。会員52名が出席する盛会となった。引き続き懇親会も先生を囲んで29人が参加して楽しく終始した。

 

講演会、 20240317- 046(3)

<< 講師プロフィール >>

十川 陽一氏  慶應義塾大学文学部 准教授
1980年生まれ
2003年(平成15年) 慶應義塾大学文学部史学系日本史学専攻卒業
2010年 博士(史学)
2019年~ 慶應義塾大学文学部准教授

<< 講演内容 >>

律令国家の地方支配は、国司と郡司によって遂行され、地方豪族を巻き込みながら地方末端まで行政機構と官人制を展開した。

第一部は「国司と郡司」。郡司たちの任命は、家柄要因が強く、適任者が無ければ能力に依り、その候補者の能力差が無ければ国造からの登用が行われた。また、地方豪族たちはなぜ律令制を受容するのかという豪族の思惑が実例を挙げて語られた。その他、位階が上がるとどのような特典が得られるか、豪族たちによる郡司になるための自己推薦や私穀献上等の中央への活動、郡司の構成や制度の変化についての内容も近年の研究の進展を織り込んで語られた。

第二部は「地方支配体制の形成と展開」。古代国造制から、国・郡・里としての地方支配体制への移行と、租庸調による税制の仕組み解説。その中で租は意外に重税ではなかったことや、庸調の詳しい解説も興味深いものであった。また、郡司層の蓄財、貨幣経済推進のための蓄銭叙位令により蓄財と位階との結びつきも見られたこと等。

第三部は「武蔵国分寺と豪族たち」。国分寺造営開始後の督促内容を「続日本紀」の実文を引いて語られ、これに対する造営遅延に付いても再三細かい指示が下った事の詳しい解説がなされた。

今講演に当たって、先生のご専門が律令官人制なのを踏まえて、可能ならば古代武蔵国における国司・郡司の関係と律令制の様な内容を織り込んで頂けると幸甚との希望をさせて頂いたところ、快く聞き入れて今回の演題にして下さっただけでなく、当会の生い立ちをも勘案して、国分寺造営の開始から遅延や苦難まで織り込んでお話し下さった事を、先生への感謝を込めて記します。

 

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