【歴】第104回 歴史をひもとく会 開催報告

〜小金井桜名勝指定99周年~

12月9日(土)14時半より、東京都公文書館研修室において、第104回例会が開催され、第102回例会の講師を務めて頂いた国分寺市学芸員の増井有真氏を含め45名の方が参加された。初めて利用した公文書館は、建屋が新しいこともあり、きれいで部屋も広々としており参加されたみなさんにも好評であった。

2023-12-09 2023,12,9歴史講演会(小金井桜) 026A講師は小金井市教育委員会生涯学習課(学芸員)の高木翼郎氏。テーマは、国の名勝に指定されて来年で100周年を迎える「小金井桜」。JR武蔵小金井駅の発車メロディーが「さくらさくら」である理由の「小金井桜」について、その誕生から名勝指定、観光地化のあと危機を迎え、それを乗り越えてきた歴史、そして保存のための取り組みを様々な写真をまじえて分りやすくお話し頂き、小金井在住の参加者からも、初めて知る内容も多く、有意義だったとの感想を頂いた。

 

<< 講演内容要約 >>

武蔵野台地は、江戸時代までは不毛の台地で人が住みにくい地域だった。この地域に画期的な変化をもたらしたのが玉川上水の完成で、玉川上水から枝分かれした分水が上水沿岸の武蔵野台地の細部に行き渡ることとなり、この地域の新田開発に大きな役割を果たした。

八代将軍徳川吉宗は桜好きで、隅田川(墨堤)や飛鳥山等に桜を植樹し観桜客が押し寄せるようになっていた。1737年頃玉川上水にも桜並木をという動きが起き、吉宗の指示で代官川崎平右衛門が奈良の吉野山、茨城の桜川等各地のヤマザクラの名品種を取り寄せ小金井橋を中心とする玉川上水の東西6km(小平市〜小金井市〜西東京市〜武蔵野市)に植樹したのが小金井桜の始まり。なお、「ソメイヨシノ」ではなく江戸文化を継承する「ヤマザクラ」で構成される桜の名所で、現在まで残っているのは「名勝小金井桜」のみとのこと。

2023-12-09 2023,12,9歴史講演会(小金井桜) 019その桜の美しさを江戸の文人等が紀行文で紹介、歌川広重が錦絵に描いたことから、江戸近郊の桜の名所となった。明治6年には明治天皇の行幸がありさらにその名声は高まった。その後開通した甲武鉄道は、その開業日を小金井桜の花見シーズンに合わせ、小金井桜の最寄り駅だった国分寺、境の両停車場は大変な人出だったという。また植物学者の三好學博士の研究や地元の保護活動が実り、1924年12月9日に奈良「吉野山」、京都「御室桜」、茨城「桜川」とともに名勝「小金井桜」として国の名勝に指定された。桜の名所の名勝指定はこの4箇所が全国第一号。その後、花の季節だけに臨時停車場として開業していた武蔵小金井停車場が正式に停車場となるなど小金井桜は街の発展の礎となった。2023-12-09 2023,12,9歴史講演会(小金井桜) 025しかしながら1965年の淀橋浄水場の廃止により用水路としての役割を終えた玉川上水の水が止まり、空堀となった水路は荒廃、ケヤキやエノキが生い茂ることとなり、桜にとって生育環境が極めて悪化、美しい桜並木は姿を変えていった。そんな中、2003年、近世・近代の土木遺構としての学術価値が認められ、玉川上水の素掘りが残る範囲が国の史跡に指定され、そこから文化財を守るために玉川上水及び小金井桜の整備事業が始まり、エノキ、ケヤキなどの高木を伐採し、ツツジ、マユミなどの低木を残して市民団体や都立農業高校と協力連携して多様なヤマザクラの苗木を育成、植樹、それに伴い桜の足下にはクサボケ、ノカンゾウ、ニリンソウ、ツルボ、ワレモコウ等の豊かな在来植物が育つという自然環境が復活しており、様々なDNAを持つヤマザクラのグラデーションが玉川上水の両岸彩る日も近いとのこと。大いに期待したいと思います。