【Y】第42回ザ・ヤングサロン「激動の世界におけるJICAの事業展開」を開催

 2022年11月27日(日)、並木公民館にて32名参加の下、第42回The Young Salonを開催、当国分寺三田会会員でもある小島眞さんの紹介で、講師としてJICA企画部長の原昌平氏をお迎えし、首題をテーマにお話し頂きました。原氏は、1989年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、(旧)海外経済協力基金に入社され、大蔵省出向などを経て、1999年から国際協力銀行で中央アジア・コーカサスを担当、2008年から国際協力機構(JICA)でイラク事務所長、南アジア部長、民間連携事業部長、本年10月から企画部長を歴任されている方す。
 一方で、新型コロナ感染症の第8波が始まりつつある状況のなか、感染症対策には万全を期した上で講演会を開催、懇親会の実施は見送りました。講演の概要は以下の通りです。
                      
                        記
第42回ヤングサロン講演会
                                            2022年11月27日
                激動の世界におけるJICAの事業展開
                                 国際協力機構(JICA) 企画部長 原 昌平

1.JICAの略歴
 1950年代に技術協力が立ち上がり1974年に国際協力事業団(JICA)発足。 2008年にJICAと国際協力銀行(JBIC)のODA部門が統合され独立行政法人国際協力機構(新JICA)が発足し、政府開発援助における技術協力、有償・無償の資金協力を行っている。 旧JICA発足時に海外移住事業団がJICAに統合されたが、その後時代の趨勢を反映し海外移住事業は縮小されている。
現在常勤の職員は約2000名弱、期限付きのスタッフや海外の現地スタッフを合わせると、全世界でさらに多い人員が開発協力に携わっている。
2.JICAを取り巻く環境
 最新の開発協力大綱は2015年に定められたが、現在見直し中。 2015年に採択されたSDGsの実現に向けてJICAも役割を果たして行く。 今国家安全保障戦略の議論がされており、自由で開かれたインド太平洋構想にODAがいかに貢献していくのかが課題となっている。 また、国内での地方活性化等の政権が掲げている課題への対応も行っている。
 それらの環境の中でJICAの組織ミッションとして「人間の安全保障の実現と質の高い成長の実現」を、またビジョンとして「信頼で世界をつなぐ」を掲げている。 中期計画として ①自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて国際社会で日本のリーダーシップを発揮するための貢献 ②国の発展を担う親日派・知日派リーダーの育成 ③気候変動への取り組み ④国内での地方活性化への貢献 を4つの重点領域とし、信頼関係の構築などの4つのアプローチの重視を挙げている。
3.JICAの業務
 法律上では開発途上地域の経済及び社会の開発若しくは復興又は経済の安定に寄与することを通じて、国際協力の促進並びに我が国及び国際経済社会の健全な発展に資することを目的とすると規定されている。 即ち、相手の国の為になることを行なう業務を通じて、国際的に皆で協力しようという気運を作り、日本及び国際経済社会の健全な発展の為に貢献するということ。
 具体的には研修員受入・専門家派遣・機材供与等の技術協力、円借款及び海外投融資の有償資金協力、無償資金協力、海外協力隊によるボランティア、海外移住支援、緊急援助隊による災害援助協力、人材養成等幅広い業務を行っており、その一環として中小企業・SDGsビジネス支援を通じた地方創生にも取り組んでいる。
一般会計におけるODA予算は2011年以降1997年の約半額に減っているが、ODAを使って日本を信頼してくれる仲間を増やすことは非常に重要だと思っている。
4.JICAの組織
 本部機能として地域毎の担当部署と分野毎の担当部署がある。 海外向けの仕事が中心だが国内にも14か所の拠点があり、語学を中心とした協力隊員の訓練、日本に来た研修員の受入れ、研究機関・大学・企業等とのコーディネイション、協力隊員の募集、中小企業との連携等を行う。
 海外では先進国を除くほぼ全世界に拠点を持つが、海外におけるノウハウは長期間その地に勤務するナショナルスタッフに溜まっており、これをいかに生かしていくかが大きな課題。
5.最近のハイライト
 現在コロナが大きな課題で、コロナ対策の支出や南アジアを中心に海外からの出稼ぎの送金の減少等で財政上困っている国々に約3,800億円の円借款による財政支援を行う一方で、病院建設等を通じて治療体制強化、予防体制強化、研究・警戒態勢強化への貢献を進めている。
 次に気候変動対策では、緩和策としてインドでのデリー地下鉄建設やケニアでの地熱発電所改修の支援を、適応策としてフィリピンでの河川改修の支援を、また緩和策・適応策横断型としてインドでの森林開発への支援等を実施。 2050年のカーボンニュートラルが国際公約だが、エネルギー消費の伸びを見込んでいる貧しい国々に一律でそれを求めるのかが難しい課題で、バランスを考えながらより環境への負荷が低いエネルギー源に移行していく為の支援を考えていかなければならない。
 他にも民間部門と公共部門が共同で行う事業への支援や開発途上国の起業家への支援も行っており、その例としてケニアにおけるバイオリサイクル事業への出資やベトナムでの風力発電事業への支援等がある。 また外国人材受入に関して「世界の労働者から信頼され選ばれる・日本」となることを目指した活動など、国内の地方を中心とした国際化を進める取り組みを行っている。
 デジタル化に関しては、いろいろな方々と連携して取り組む必要を痛感している。
 国際紛争への対応として今一番ホットなのはウクライナで、今までに780億円の財政支援を行い、更に日本の災害経験の共有を進めている。 また、JICAの支援で地雷除去の経験を積んだカンボジアの人たちから地雷除去のノウハウを共有してもらうための支援を行っている。
                                     (文責:小林(一) 作成:板橋)