慶應連合三田会・菅沼会長から『安全のための緊急のお願い』のメッセージが届いています。(詳細はここをクリックください)

2021年1月7日

連合三田会の皆様

                              慶應連合三田会会長
菅沼安嬉子

安全のための緊急のお願い

拝啓
 毎年、年頭のご挨拶が行きかう頃ですが、新型コロナウイルス感染拡大により2度目の緊急事態宣言が出され、皆様へのご挨拶もオンラインになってしまいました。
 日本の感染者は世界から見れば数は少ないですが、専門家は盛んに医療崩壊の危機であると叫んでいます。私たち医療関係者には危機的状況はよくわかっておりますが、ニュースなどでは一般の方々がどのくらい危険を感じているか疑問に思えます。数字だけでは別世界のことのように思ったのでしょうか。年末も忘年会、クリスマス会などたくさんの人出があり、2週間後の今感染者が急増していると思われます。
 私は個人的に、今まではともかく、今から後は決してコロナに感染したくないと危機感を持っています。なぜでしょう。今まで重症者は即入院させてもらえて病院が総力を挙げて治療に当たりました。昨年の3月まではコロナウイルスの正体がわからず死者が多く出ましたが、4月の緊急事態宣言で感染者が減り時間が稼げたので、治療薬や、なぜ死に至るのかという機序もわかり対策が打てるようになりました。
 しかし、この新型コロナウイルスは非常にしたたかです。肺炎で死亡するとされていますが、血管にも感染して毛細血管に血の塊(血栓)ができます。免疫系が暴走してサイトカインストーム(サイトカインとは免疫系の様々な物質)と言って、本来は人の感染などを抑える物質が嵐のように出てきて人の体を攻撃してしまいます。これも血栓を作りますから全身の血管が詰まり多臓器不全で亡くなりました。
 サイトカインストームには免疫系を抑える中外製薬のアクテムラが効くことがわかりました。血栓予防には血液を固まりにくくする薬を使用します。肺が強くダメージを受けたらECMO(体外式膜型人工肺)で肺を休めます。ここまで読まれた方は楽勝だという印象を持たれたのではないでしょうか? しかし実際は毎日採血して状態を把握して治療しなければなりません。血液サラサラの薬は使いすぎたら脳出血などを引き起こします。もちろん肺のCTをチェックして肺炎治療にできる限り効果があるとされる薬を使います。ECMOは機械があればいいというものではありません。医師でも使いこなせる専門医は数が少なく、勿論私など使い方も知りません。そしてECMOを回すと24時間医師、看護師、臨床工学技士などがつきっきりで対応しなくてはならないのです。一人の患者に10人以上必要です。
 さて今述べたことは主だったものですが、もちろん入院しなければ治療を受けられません。コロナ対応の入院病床がひっ迫してきたと毎日言われています。東京都は60%を超えたといわれましたが、一つの病院に10床コロナ対応の病床があるとすると、7床埋まったと思わなくはなりません。あと3床あると思われるかもしれませんが、感染者が増えると全部埋まるのはすぐです。10床全部が埋まったら、いくらお金を出すといっても入院することはできないのです。そうしたら今まで読まれたきめ細かな治療はもちろん受けられず、救えた命が失われる事態になります。これが医療崩壊です。
 コロナの患者さんで救急車が出払ったら心筋梗塞や脳梗塞で救急車を呼んでも来てくれません。ご自分がそのようになったことを想像してみてください。高熱が出ても救急車は来ないかもしれません。乗れたとしても病院をたらい回しになるかもしれません。病院が悪いのではなく一杯なのです。ご自分のこととして考えてみてください。自分のためにも医療のためにもこれからは絶対に感染しないよう、感染の確率の高い行動を控えてくださるようお願いいたします。家族も別々に食事をしたほうがいいかもしれません。
 マスクは不織布のサージカルマスクをお互いにつけていれば80%感染を防止できるということです。なるべく布ではなくサージカルマスクをつけてください。鼻が出ていたらウイルスは入ります。しっかりつけても80%です。あまり近くで大きな声をださないように。プラスチックの顎マスクは全く効果がありません。上からウイルスが全部出てきます。顎マスクをつけている人には3m以内は近寄らないほうが安全です。ぜひ気を付けてください。

 昨年12月から世界各地で新型コロナワクチンの接種が始まりました。史上最速の速さで承認されたので、効果も副作用も未知数です。怖いから受けないという人も沢山います。
 しかし今人類が持っている武器はワクチンしかないのです。どこの国も緊急事態宣言を繰り返し感染者の数が減ると解除してまた感染爆発しています。そのたびに経済の打撃はひどく、この繰り返しだけでは経済がじわじわと死に至ることになりかねません。
 日本も同じです。毎日飲食店の窮状がテレビで流れています。今回の緊急事態宣言ではなるべくたくさんの補償を出してもらえることを願います。でも飲食店だけではなくどんな業種も打撃を受けています。セーフティーネットも大事です。
 たくさんの予算が計上されましたが、これらのお金は未来の世代からの借金です。コロナが収まったら戦後の復興期のようにがむしゃらに働いて次の世代の負担を減らしてあげなくてはなりませんね。
 オリンピック、パラリンピックが今年開催できないと4兆円の損失だそうです。ワクチン接種をしない日本に各国の人は来ず、オリンピック、パラリンピックは開催できないでしょう。私は半分を自分のため、半分を社会のためにと思ってワクチン接種を受けるつもりです。
皆様もよくお考え下さい。

敬具

2021年1月11日