【講】国分寺三田会第12回講演会を開催しました

国分寺三田会第12回講演会
主催:国分寺三田会
後援:国分寺市、国分寺市教育委員会

2019年6月16日(日)、JR国分寺駅北口cocobunji WEST 5階リオンホールにおいて、第12回国分寺三田会定期講演会を開催致しました。講師には吉井博明氏(東京経済大学名誉教授)をお迎えし、渡邉会長挨拶の後、「国分寺市の地震危険と備え」をテーマに講演頂きました。会場には当会会員に加え、近隣三田会・稲門会、欅友会、一般市民の方々等出席者総数166名の皆様が参加され、大変盛況な講演会となりました。講演では地震発生のメカニズムの解説や数多くの詳細なデータが示された他、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震の動画も加わり、臨場感溢れたものとなりました。講演概要は下記の通りです。
尚、引き続き行われた懇親会には81名の方々が出席され、星野副会長による挨拶の後、立川三田会顧問大石敏雄氏、国分寺稲門会会長清水元氏にご挨拶を頂き、会食・歓談に移りました。中程で新入会員の紹介もあり、会場は和気藹々のムードで熱気に包まれ、楽しい盛大な会となりました。
最後は参加者全員が肩を組み、「若き血」を高らかに歌いお開きとなりました。

講演概要

  1. 大災害とは何か
    大災害は防災機関の対応能力を大幅に超える被害発生の為、重要な案件に救急対象が絞られる(公助の限界)ので、被災者自身やボランティアによる自助、共助が重要性を増す。阪神・淡路大震災等では要救出者の内の8割(2.7万人)が近隣住民や家族等により救出されている。 大災害が発生すると、経験の乏しさ、被害の状況不明、情報不足等により何をどういう順序でなすべきか対応が極めて難しい。 如何なる準備が必要かというと、①大災害が起きた時の具体的な災害イメージを予め持って置く事(例:立川断層が動いた時は、阪神淡路大震災等の実例を見て、その状況をイメージして置く事)、②また必要な対応の実行可能性を事前に考え、災害発生後では対応出来ない場合は、事前に対策を実施して置く事、③更に頭の訓練に加え実技(実働)訓練で鍛えて置く事が必要である。
  2. 首都圏(国分寺市)の地震危険
    首都圏・東京の地下はプレート3枚が重なっている為、世界の中でも最も地震危険が高い。
    (1)首都圏で被害をもたらす地震の種類
    地震の種類には活断層型地震・海溝型地震(=プレート境界型)・プレート内地震がある。首都圏に被害をもたらすのは比較的浅い所で発生する地震である。
    東京都は立川断層帯の地震(活断層型地震)の規模をM7.4程度、30年発生確率は0.5~2%、国分寺市の震度は6強(一部7)と想定している。
    因みに関東大震災(プレート境界型)による想定では、国分寺市の震度はほぼ全域で6弱であった。(因みに震度6弱と6強の被害は全く異なる)。 また南海トラフ巨大地震(プレート境界型)による想定では、国分寺市の揺れは震度5弱であり、東日本大震災の時とほぼ同程度であるが、長周期振動(往復数秒~10秒位の間隔でゆっくりゆれる)が危険である。
    (2)首都圏でM7クラスの地震が発生する確率
    首都圏におけるM7クラスの地震は元禄関東地震と大正関東地震の間、220年に8回発生しており、平均発生間隔は27.5年である。このような地震がランダムに発生するとすれば、首都圏のどこかでM7程度の地震が今後30年間に70%の確率で発生する事になる。国分寺直下でも小田原直下でも不思議はない。
    (3)震度6強以上の揺れの発生確率
    国分寺市における発生確率「30年以内に震度6強以上の揺れに襲われる確率」は6~26%(⇒6%に近い方)である。
    (4)国分寺市で想定される、「最悪」の揺れ
    震度6強以上の揺れがどの位のものか、最近発生した地震時の揺れの映像を、 ①阪神・淡路大震災、②東日本大震災、③熊本地震の3例で見て頂く。
               <ここで動画を視聴>
    (5) 震度6強以上の揺れで起きる建物倒壊と家具の転倒
    1)家屋倒壊
    耐震補強してあっても、その後の余震が強いと危ないので、外に出る必要がある。
    2)高層ビルにおける家具の転倒(長周期地震動)
    免振構造では、想定以上の震度になるとかなりの揺れになる。熊本地震で問題となった点である。
  3. 首都圏における過去の地震災害の様相
    地震災害は複合災害であり、揺れによって様々なものが引き起こされる。その典型が火災である。
    (1)関東大震災(1923年9月1日午前11時58分発生)
    一番揺れが酷かったのは神奈川県であった。中でも相模トラフの傍ということもあり、小田原が一番酷く家屋の全潰率100%であった。
    更に火災による被害が甚大であった。火災の延焼速度は人間が歩くより遅い為、まだ大丈夫との思いから、逆に逃げ遅れて死亡したケースが多い。また火災旋風が起こると、今までの被害想定を大きく超える可能性がある。
    (2) 阪神・淡路大震災(1995年1月17日午前5時46分発生)
    国分寺に於ける地震被害を考える上で参考になる地震である。本件では揺れによる家屋倒壊が被害の中心であったが、火災も多発した。通電火災が多かったが、風が弱く大規模延焼は免れた。避難生活の中で亡くなる人(関連死)が多発した。多くの生き埋め、閉じ込めが発生したがその多くは住民が救助した。
  4. 国分寺市で想定される地震被害
    (1)地震による被害の多発性(赤印は、国分寺市で大きな被害をもたらす項目)
    1)揺れによる建物の倒壊や家具の転倒等:死傷
    2)液状化等による建物の傾斜等
    3)山・崖崩れ等による建物被害等
    4)津波による被害
    5)火災延焼による被害:避難行動
    6)工場等の誘発事故による被害
    7)交通機関・道路被害に伴う影響:帰宅困難等
    8)ライフライン被害に伴う生活支障:避難生活
    (2)東京都による地震被害想定の結果
    一番厳しいのが立川断層帯、次は多摩直下型であり、この2つに注目する必要がある。立川断層帯の場合は木造全壊棟数の内の3分の1(800棟)はぺしゃんことなる。また2人に1人が避難する事となる。(国分寺市は人口12万人、木造2万棟、非木造5千棟)
国分寺市の被害 立川断層の地震 多摩直下の地震 元禄関東地震 東京湾北部地震
建物全壊棟数 2,399棟 1,110 368 87
全壊率(木造) 10.80% 4.90% 1.60% 0.30%
全壊率(非木造) 4.20% 2.00% 0.40% 0.20%
出火件数 14件 12 2 2
延焼棟数 4,637棟 3,267 221 191
死者(人) 187人 111 22 9
負傷者(人) 1,725人 1,095 521 196
避難者(人) 58,443人 39,102 17,157 8,187
帰宅困難者(人) 23,791人 23,791 23,791 23,791
エレベーター閉込め 45台 37台 22台 21台

 

  1. 国分寺市民に望まれる地震の備え
    (1) 自宅等の被害を想定する
    自宅建物が倒壊(ペシャンコ、傾く)した場合にその下敷きになり死傷するかも知れない、ブロック塀が倒壊するかも知れない、ドア等が変形し閉じ込められるかも知れない、家具などの下敷きになるかも知れない、といった災害イメージの形成が大切である。
    (2)自分の対応をシミュレーション
    地震発生直後は外に飛び出すか、机の下にもぐるか等自分の身の安全確保の方法を決めて置く事、また消化器の場所確認、懐中電灯はフックで吊って置くなどの工夫、動く時は靴やスリッパが必要(ガラス等を踏む危険性)、ラジオ等での情報収集等対応をシミュレーションしておくなどの必要がある。
    また揺れが一段落した後は外に出て、自宅の被害や近所の様子を確認。火災が延焼し始めたら避難を考える事。
    (3)事前の備えを考える
    ①命を守る・住宅の耐震化
    住宅の耐震化が命を守る上での基本である。耐震診断と耐震補強、建て替え等の備えが必要である。大金を使い耐震補強してもその効果を実感できないとか、工事期間中の不便さ、生きている間に大地震は来ないだろうといった考えが耐震化の判断を阻害するが、工時費には一部公的補助もあり、また何よりも命を守る事を第一に考える必要がある。
    ②命を守る・火災延焼時の避難
    火災延焼時の避難について、延焼のスピードは比較的遅いが、延焼が始まったら安全な場所に避難するのが鉄則である。関東大震災では火に囲まれ逃げ遅れ亡くなったケースが多い。
    ③怪我をしない為の準備と直後の対応
    地震による怪我を防ぐ為の事前対策としては、家具等の転倒防止・ガラスの飛散防止・落下防止等の諸対策、またシェイクアウト訓練(姿勢を低く、体・頭を守る、揺れが収まるまでじっとしているという、身を守るための基本的な行動を一斉に行う訓練)等に慣れて置く事が必要である。
    またいざ揺れた時は、防御姿勢(シェイクアウト行動等)を取る事、2階にいた場合は1階に降りない事、火を使っていた時はその場を離れ、揺れが一段落してから消す事、割れたガラス等に注意してむやみに動き回らない事が必要である。負傷原因の3~5割は家具等の転倒・落下・移動によるものである。転倒防止対策によって有効性に違いがある(L型金具等が有効である)。
    ④帰宅困難:外出中に大地震に襲われた場合 外出中に大地震に襲われた場合、帰宅が困難になる。首都直下型地震による被害は東日本大震災の時よりも遥かに大きくなる事から、より厳しい問題が発生する。例えば、途中で延焼火災やビル倒壊・落下物に巻き込まれる事、交差点や道路の合流点等で人の流れが衝突(群集雪崩)する事など。山手線より内側の地域にいる時は事態が落ち着くまで直ぐに移動せず様子を見た方が良い。個人の準備としては家族との連絡方法や、家族が避難する方法を決めて置く事が必要である。また徒歩で帰宅する場合の準備、事業所等に留まる場合の備え、帰り道の確認(地図、徒歩帰宅訓練)などが必要である。
    ⑤避難生活
    自宅やライフラインが被害を受けた時は避難せざるを得ないが、何処に避難したらよいか。指定避難場所(地区防災センター)はダメージを受けておらず受入れ可能か、入れなかった場合は親戚・友人宅・自宅でのテントや車の中・温泉地等に避難するか。
    避難所での厳しい避難生活(寒さ・暑さ・固い床・狭い空間・劣悪なトイレの状態・プライバシーなし・ストレス)等に対処を余儀なくされる。避難所等での生活はいくら改善しても自宅での生活のようにはならない。
    ⑥共助力の強化
    公助、自助の限界を乗り越える共助力の強化が国分寺市は全国でも最も進んでいる。自主防災組織と地区防災計画が鍵であり各自治会等14の地区で防災計画を策定済または策定中である。
  2. まとめ
    ①国分寺市は今後30年以内に震度6強以上の猛烈な揺れに襲われる危険性が高い。
    ②その場合、耐震性に乏しい建物が大量に倒壊し、消防力を超える火災が発生し延焼する可能性がある。
    ③また、避難所の収容力を大幅に超える避難者が発生し、車避難や軒先避難を余儀なくされる。
    ④大量の帰宅困難者は余震と火災延焼の中を逃げ惑うことになるかもしれない。
    ⑤これらの問題を事前対策(耐震化、家具固定、感震ブレーカー、予備避難所等指定、安否連絡等の対策)や訓練(シェークアウト、初期消火、徒歩帰宅等)によって少しでも改善しておくことが強く求められる。
    ⑥自助と公助による対策だけでは限界があり、地域の共助力も同時に高めておくことが重要。そのためには地区毎に共助の仕組みを作っておくこと (地区防災計画の策定)が強く求められる。多くの市民の皆さんが、各地区で計画の策定や見直しに参加すると同時に、訓練等を通じて防災力を高めることを切に望みたい。

【質疑応答】

  • 災害ボランティアが助け合っていく段階は、いつ頃か?
    ⇒災害ボランティアは色々なタイプがあるが、多くの場合には最初の3日間は難しい。市の場合では社会福祉協議会がボランティアセンターを立ち上げる。それに、だいたい2~3日かかる。危険が去ってから。安全な所を中心にボランティア活動が始まる。
  • どれくらいの間に、どれくらいの確率で本当に地震が来るのか?
    ⇒個人的な見解としては小田原に注目。元禄の関東地震や大正の関東地震の前もM7クラスの地震は小田原で始まった。西相模灘(伊豆半島の東側)で地震が起きたら、次は首都直下が危ない。その時は、国分寺もいよいよ切迫してくる。

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2019年7月5日