【歴】第85回 歴史をひもとく会 講演会報告

京都1200年、人物に見る天皇家と仏教の歴史

 平安の都の名にそぐわぬ治乱興亡の歴史を秘めた京都は、いつも四季の華やぎを添えてわたくしたちを迎え入れてくれます。

そんな京都に惹かれ、王朝の歴史に興味を持った伊東克氏が、京都ステイを重ねつつ京都研修に没頭するようになったきっかけは、海外での貴重な経験すなわち、定年退職後、スペインに語学留学した折、クラスメイトから「日本の皇室は本当に万世一系なのか」と聞かれ、満足な返答ができなかったことにあるとのこと。

 85回の講演会は7月7日()、本多公民館にて、国分寺三田会の会員(S39経)で京都通の伊東克氏を講師に迎え、44名の参加者の下で行われました。

講演の冒頭に講師は、京都の印象として次の4点、①伝統と常なる挑戦、②寺社と連綿たる伝統行事、③世界に通じる革新的企業群の隆盛、④温故知新を挙げています。明治維新による東京遷都後の衰退を乗り越えて、今日も繁栄を続ける京都の核心を捉えた見事な視点といえましょう。

 さて、講演は2部編成で、第1部は天皇家の歴史、休憩をはさんで第2部は平安期における仏教の歴史について行われました。講演内容は、歴代の天皇や仏教の高僧の人物像を語ることを通して、歴史物語に迫るという特徴的な試みであり、その手法は、あたかも塩野七生著の「ローマ人の物語」に通じる様に感じます。

 1部では、桓武天皇から始まり、嵯峨、清和、醍醐、後三条・白河、崇徳・後白河、後鳥羽、後醍醐、後水尾と続き、最後の光格天皇まで10人の天皇の物語が語られ、特に平安時代の歴代の天皇を、親政の時代、摂関時代、院政時代と3つに切り分けて説明。その内容はとても興味深く、普段は耳にできない事柄や、今まで知らなかったお話ばかり。真剣に、じっと聞き入る会員の表情からも会場全体が講演に魅了されている様子が窺われました。

 1部終了後の休憩の合間に、「京都検定試験問題」が会場内に配布され、10問のうち5問以上正解ならば、3級の資格レベルということで、参加者が懸命に回答に取り組む姿が興味深い光景でした。こういったところに講師のサービス精神が伝わってきます。

 2部は、平安期から鎌倉期までの日本の仏教を切り開いた高僧の物語。最澄に始まり空海、円仁、法然と続き最後は親鸞まで5人を選び、奈良時代に国教となった仏教が、その後どの様に隆興していったか。官によって取り入れられた仏教は、遣唐使を通じてその奥義が伝授され、最澄の死後には比叡山延暦寺に大乗戒壇の設置も認められ、やがて鎌倉期に入り、比叡山で学んだ法然・親鸞等により民衆仏教へと変化していく様子が熱く語られました。

 今回の公演を通じて、講師が伝えたかったものは、海外生活を通して知り得た日本のすばらしさ、世界が羨む皇紀2670年余りに及ぶ天皇制の伝統の凄み、京都1200年に及ぶ歴史の重み等々ではないかと推量します。京都学の片鱗に触れ、興味深い話に感じ入った一日でした。

以上