【Y】第26回The Young Salon講演会を開催しました

【テーマ:脳梗塞を防ぐ心房細動の最新治療】

 11月4日(土)、第26回The Young Salonの講演会を開催し、56名の多くの皆様に参加頂きました。講師は当国分寺三田会の会員、古賀さんの紹介により、東京ハートリズムクリニック院長、桑原大志先生をお迎えし、「脳梗塞を防ぐ心房細動の最新治療」をテーマに約2時間の貴重なお話を頂きました。私達に大変関心の深いテーマであり、お話の中で専門用語もありましたが、出席者は講演の内容を熱心に聴き入っている様子が覗え、且つ桑原先生自身の著書が配布されましたので、本日のお話を更に良く理解する為の手引きとして今後有効活用させて頂ければと思います。心房細動不整脈は脳梗塞や心不全となり得る不整脈で国内の患者数は170万人に上るとも言われておりますが、心房細動の根本的な治療法としてカテーテルアブレーションがあり、桑原先生はこの治療で世界トップクラスの治療実績を持っています。

【講演概要】

【1】心房細動とは

心房細動はその出現様式や持続時間により3種類(発作性、持続性、慢性)に分類される事、心房細動は心房細動起源という異常な心房筋による高頻度の興奮や、一旦始まった心房細動を持続させる心房細動基質が原因である事、心房細動が発生すると他の部分にも伝導され、規則性がなくなり血栓等を発生させこれが脳梗塞等を引き起こすものである。

心房細動の原因は下記の通りである。特に①、②、③は3大原因と考えられている。

  1. 加齢:歳をとると心臓も疲れ、傷み、心房細動の原因となる心房細動起源や心房細動基質がつくられる。
  2. 高血圧、心臓病:高血圧による心臓へのストレス、また心臓病は心臓への負担をかけて 心房細動の原因となる。
  3. 飲酒:節度のある飲酒が必要である。ビールは中ビン1本、日本酒1合、焼酎0.6合、ウイスキーダブル1杯程度であれば、例え連日飲酒しても心房細動を含め健康被害は免れる。上記飲酒量の3倍以上は多量飲酒となり心房細動発症のリスクを高める。
  4. 睡眠時無呼吸症候群:無呼吸中の低酸素血症が心臓に負担をかけ心房細動になり易い。
  5. 甲状腺機能亢進症:甲状腺で全身の細胞の活動を活性化させるホルモンが必要以上につくられると、眼球突出や頻脈などの症状が現れる。この頻脈の一つが心房細動である。

心房細動の3大症状は動悸、息切れ、めまいであるが、心房細動の患者はそうでない人に比較して約5倍の確率で脳梗塞を引き起こすと言われている。また日本人の死亡原因は平成25年には癌、心臓病、脳血管障害の順に多いが、脳血管障害の4分の3が脳梗塞である。以下、心房細動が引き起こす重病について述べる。

  1. 脳梗塞:脳梗塞とは脳を栄養する血管が閉塞し、脳が壊死に陥る病気であるが、心房細動による脳梗塞は重症化し、しかも全く予兆がない。心房細動が死亡のリスクを上げる最たる要因が脳梗塞である。
  2. 認知症:心房細動と認知症の関係のメカニズムは不明であるが、心房細動が血栓を生じやすい事などを考えると、長期間血栓が少しずつ脳に飛び小さい血栓ができて、徐々に脳機能が低下する可能性がある。
  3. 心不全:心不全は心臓の機能が低下し、体が必要とするだけの血液を送り出せず、息切れなどを自覚する状態を言う。心房細動による早い心拍が続くと心臓は疲弊し心不全を発症する。
  4. 心筋梗塞:心筋梗塞患者全体から見ると、その原因として心房細動を有している人は少ないが、心房細動の患者が急激に激しい胸痛を自覚する場合は、心房内にできた血栓が、心臓が栄養とする冠動脈を閉塞した事が考えられる。

【2】心房細動の治療法

心房細動が発症したら何らかの治療方法が必要で、対症療法の薬物療法と 非薬物療法(カテーテルアブレーション、外科手術)がある。

(1)心房細動の薬物療法
薬物療法は症状の緩和と脳梗塞の予防が目的であり、3つの方法がある。

  1. 抗凝固療法(脳梗塞の予防) 心房細動になると心臓内の血流が滞り、血液の塊である血栓が出来やすくなりこれが脳に詰まると脳梗塞を発症するので、血液をさらさらにする薬の投与が検討される。薬剤としてはワルファリンとDOAC等がある。
  2. リズムコントロール(症状の緩和) 心房細動そのものが起きないように、または起きても直ぐに治るようにする治療方法であり、薬剤としてはアオダミンなどがある。
  3. レートコントロール(症状緩和、心機能悪化の予防) 心房細動はそのままにして、心房細動によって心拍数が速くならないようにする治療方法であり、薬剤としてはベラパミル、ビソプロロール、ジギタリスなどがある。

(2)カテーテルアブレーション
心房細動起源や心房細動基質を探し出し、カテーテルの先端を押し付けて 電気を流しその心筋を焼く治療である。ターゲットの多く(85%)は肺静脈 にある。

カテーテルアブレーションにより心房細動がどの程度治るのかは、様々な条件により異なり、また心房細動期間が短い程高くなる。因みに、発作性心房細動(心房細動の発作が1週間以内に治まるもの)に対するカテーテルアブレーションの治癒成功率は、1回の治療で1年後に70%、5年後に60%。再発した患者が再度アブレーションを受ける事により、最終アブレーションの1年後に90%、5年後に80%の人が再発なく過ごせている。

心房細動により心臓が拡大し心機能が低下した患者の多くはカテーテルアブレーションにより心臓は小さくなり心機能も改善する。但し、全ての医学的治療について言える事であるが、カテーテルアブレーションによる脳梗塞、心タンポナーデ(心臓に穴が開く)、食道炎等の合併症がある。

【3】心房細動にならない為には、

健康的な生活習慣を保つ事が大切であり、鍵を握るのが食事と運動である。諸悪の根源は肥満であり、体重/(身長)が25以上の場合は体重削減に努める必要がある。但し、急激に体重を減らすのは禁物で年間に5~7%の削減に留める事が適切である。

食事: 五大栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル)をとる事に心掛け、バランスのとれた食物を毎日規則的にとる事が肝要。飲酒については既に述べた通り飲み過ぎない事が大切である。

運動: 有酸素運動を日々継続して行う事が必要。全く汗をかかない運動では健康改善効果は得られにくく、一方やり過ぎは心房細動のリスクを高めてしまうので注意すべきである。

以上本日の講演の概要ですが、心臓医療・不整脈等について疑問点や質問などあれば下記宛てメールで連絡頂ければ、先生より回答を頂けますので、是非ご利用下さい。

尚、講演会後は、23名が西国分寺駅近くの居酒屋に集合し、美味しいお酒と料理で盛り上がりました。

【連絡先】

東京ハートリズムクリニック

電話:03-6371-0702

東京都世田谷区粕谷3-20-1

Mail:info-thr-tokyo-heart-rhythm.clinic

東京ハートリズムクリニックホームページ:www.tokyo-heart-rhythm.clinic

世話役:前原憲一

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