【講】国分寺三田会第9回定期講演会を開催しました

第9回国分寺三田会定期講演会
主催:国分寺三田会、 協力:立川三田会、国立三田会
後援:国分寺市、国分寺市教育委員会、国分寺市社会福祉協議会

2016年7月2日(土)に国分寺駅ビルLホールにおいて本年度主要行事であります「第9回国分寺三田会定期講演会」を開催いたしました。講師に医療法人社団慶成会会長の大塚宣夫先生(医学博士、青梅慶友病院・よみうりランド慶友病院創設者)をお迎えし、小笠原国分寺三田会会長の挨拶の後、「豊かな老後は自分でつくる(終活)」という演題で、約1時間半(質疑応答含む)の講演をしていただきました。会員以外の参加者は立川三田会、国立三田会、その他近隣三田会、KP会、国分寺稲門会、欅友会の皆様を始め、今回は特に国分寺・小金井・小平の一般市民の方々も多数参加され、出席者総数は約200名の会場が満席となり、たいへん盛況な講演会となりました。
引き続いて行われた懇親会には大塚先生を始めとして約90名の方が出席され、渡邉国分寺三田会副会長の挨拶、大石立川三田会会長の乾杯のご発声の後、会食・懇談に移りました。

講演概要
大塚先生は、1974年に訪問された姥捨て山のような老人病院の状況に衝撃を受けられたことがきっかけとなり、自分の親を安心して預けられる究極の終の棲家をめざして1980年に青梅慶友病院を、2005年にはよみうりランド慶友病院を設立され、これまでに患者数は10,000人を超え、8,000人以上の方の人生の最後に立ち会われました。今回はそのご経験を踏まえて、豊かな老後をつくるための貴重な知識、ヒントについてご講演をいただきました。

日本は65歳以上の人口が26.7%、75歳以上の人口が12.9%になり、超高齢社会を迎えている。核家族化に加えて家族も高齢化しており家族による介護力が低下していること、高度経済成長と次世代人口の維持を前提として作られている社会保障制度も脆弱化していることから、超高齢社会の重圧は極めて深刻である。
このような超高齢社会において老後を豊かに過ごすためには、①配偶者や子供の世話になることは難しく(親の面倒をみる動物はいない)、自分で老後を考え準備する、②老け込まず(年齢の0.8掛けが真の年齢と意識する)、依存心を捨て、身体の衰えに負けない精神力で自分を元気に保つ、③75歳を超えると臓器が耐用年数を迎え、自己修復力が低下し、認知症への不安が生じてくる等、心身ともに変わることを認識する必要がある。残念ながら認知症は現在の医学では治療ができない。認知症になってしまったらできないことを今やるべきである。
また、お金では幸せを買うことができないが、お金である程度老後の不便さ、不具合を回避することはできる。自分のお金を老後のために上手に使い、確保しておくことが必要である。
老後を迎えるにあたって三つのステージに分けて考え、対応することが重要である。前期(65歳~75歳)では、自分のことは自分で対処し、仕事を続ける等自立を心掛け、健康管理に留意する。一人暮らしのできる人は長生きができる。中期(75歳~85歳)ではあらゆる面での衰えが自他ともに感じられるようになり、認知症や介護の問題が身近になってくる。先行きが不透明だが、今やりたいことはすぐやるように心がける。後期(85歳~)は人生の最終楽章であり、医療の限界を知りジタバタしないことである。
それでも介護、医療が必要になる時が来る。まず、家族介護の難しさを認識すべきである。介護は優しい気持ちだけではうまくいかない。介護は技術・知識・コツ・仕組み・道具立てを必要とするプロの仕事なのである。また、このままだと崩壊が懸念される公的サービスの実態、ピンからキリまである高齢者施設の実態、そして受ける側にとっては苦痛や不安が伴う医療措置や延命を第一優先にせざるを得ない医療現場の実態等について知っておくことも重要である。
介護はプロに任せ、苦痛なく枯れるように穏やかに人生の幕を閉じる。これが家族への最良のプレゼントである。“終わり良ければすべて良し”である。

最後に、大塚先生から超高齢化社会への二つの提言をいただいた。

1. 高齢者の定義の見直し
高齢者の定義を65歳から75歳とし、それぞれが自分の力で生きる努力をする。そうすることで社会は活性化し、わが国の抱える難問の解決法も見えてくる。
2. ヨーロッパ式人生の終わり方
ヨーロッパの老人病院では寝たきりの患者が極めて少ない。動物の世界がそうであるように、自分の力で食べ物が飲みこめなくなったらそれ以上の手段はとらない。我が国もヨーロッパ式の人生の終え方を見習うべき時期に来ている。

老後は誰にも訪れますが、多くの方が十分に準備をせず、ついつい先延ばしにしてしまいます。今回の大塚先生のお話はまさに目からうろこで、「終活」を考える上で重要なヒントをたくさんいただきました。人生を楽しみながら、老け込むことなく、自分で老後を考え準備しておくことの必要性を改めて感じました。

〈大塚宣夫先生プロフィール〉
1942年 岐阜県生まれ
1966年 慶應義塾大学医学部卒業
1968年~1979年まで (財)井の頭病院で精神科医として勤務
1980年 青梅慶友病院を開設し、院長に就任
1988年 同病院を医療法人社団慶成会に変更し、理事長に就任
2005年 よみうりランド慶友病院を開設
2010年 医療法人社団慶成会会長に就任
著書:「人生の最後は自分で決める」(ダイヤモンド社) 他
(文責 髙橋伸一)

講演会事務局 前原憲一(S45工)、藤枝とし子(S43文)、髙橋伸一(S45法)、
岩田友一(S45工)、古賀良三(S46経)、久保田宏(S46工)、
池田敏夫(S47商)、沼野義樹(S48経)

大塚先生1

講演すがた1

会場風景1